研究課題/領域番号 |
16K05098
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 亮 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (40447719)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Gorenstein環 / Cohen-Macaulay環 / 極大Cohen-Macaulay加群 / 超曲面 / 導来圏 / Ulrich加群 / Auslander-Reiten予想 / 有限表現型 |
研究実績の概要 |
平成29年度は以下の研究を行った。 (1) Auslander-Reiten予想はGorenstein環上でも未解決だが、いくつかの条件下で成立する。これらの結果をCohen-Macaulay環に拡張し、荒谷の定理と小野-吉野の定理を回復した。(2) 極大イデアルが直可約な局所環上では、射影次元が無限の加群のシジジーの直和が極大イデアルを直和因子にもつことを示した。極大イデアルが擬直可約な局所環上で特異圏のthick部分圏の完全分類を得た。(3) 極小重複度をもつCohen-Macaulay局所環上のUlrich加群の構造を調べた。Ulrich加群の生成問題を考察し、Ulrich加群が極大Cohen-Macaulay加群のシジジーに一致する条件を決定した。(4) 2次元の正規次数付き環が斉次素元をもつための必要十分条件を、射影曲線上の有理係数Weil因子の言葉で記述した。そのような環が有理特異点をもつための必要十分条件を与えた。(5) 岩永Gorenstein孤立特異点のCohen-Macaulay安定圏に対しては局所有限性と有限表現型が同値になること、有限生成Krull-Schmidt三角圏は局所有限ならば0次元になりExt有限の場合は逆も成り立つことを示した。導来圏の直交部分圏による生成問題も考察し、Rouquier, Krause-Kussin, 吉脇の結果を回復する定理を得た。(6) Cohen-Macaulay局所環の(一様)Auslander条件および半双対化加群の自明性が一般に局所化しないことを証明した。有限表現型のCohen-Macaulayファイバー積の環構造を決定した。(7) (A_\infty)型の超曲面特異点上の直既約Cohen-Macaulay加群の退化を行列表現を用いて調べた。一般の可換環上の有限生成加群の退化を構成する一方法を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コホモロジー(Ext加群)の消滅の自明性がthick部分圏の分類を可能にするが、Auslander-Reiten予想はコホモロジーの消滅の自明性を主張するものであり、この予想を研究することは課題の解決に繋がることである。また、非完全交差環上のthick部分圏の完全分類という大目標に向けてまずは環構造に多少の条件を設けてそれを行うことから始める計画だったが、その計画通りに極大イデアルが擬直可約な局所環上で特異圏のthick部分圏の完全分類に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画に加えて、thick部分圏の分類を可能にする位相空間の構成とその構造解析も併せて行っていく。テンソル三角圏に対してはBalmerスペクトラムと呼ばれる位相空間が付随し、この位相空間の理解がすべての根基thickテンソルイデアルの分類を可能にする。有限生成加群の有界導来圏や特異圏などはテンソル積を持たない三角圏なので、一般の三角圏に対してBalmerスペクトラムに類似する位相空間を構成し、それを用いてthick部分圏の分類を行うことを考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年6月にSrikanth B. Iyengar教授との研究打合せのためユタ大学に数週間出張する計画が生じたため。
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