研究課題/領域番号 |
16K05099
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川北 真之 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (10378961)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 極小対数的食違い係数 / 重み付き爆発 |
研究実績の概要 |
極小モデル理論に現れる特異点の重要な不変量である極小対数的食違い係数について,特に特異点を固定して境界因子を動かす場合の性質を研究した. 極小対数的食違い係数の取り扱いが難しい理由の一つとして,それを計算する因子の性質がよく分かっていないことが挙げられる.この問題に応えて,非特異曲面上の極小対数的食違い係数を計算する因子を完全に決定した.正確に述べると,特異点が対数的標準である場合,そのような因子はすべて重み付き爆発で得られることを証明した.また,特異点が対数的標準でない場合はそのような因子は無限にあるが,少なくとも一つはやはり重み付き爆発で得られることを証明した.証明の方法は,因子の中心に沿う爆発を続けて得られる例外因子のうち,重み付き爆発の範疇に入る最上空のものに着目するシンプルな方法である. さて,特異点の境界因子を増やしてちょうど対数的標準な特異点を構成して,より調べやすい不変量である対数的標準閾の性質を用いることは,極小モデル理論の標準的な手法である.この視点に立てば,極小対数的食違い係数を計算する因子は境界因子を上手に増やすことで対数的標準閾も計算するのか,という自然な疑問が生じる.この問題に対して,非特異曲面上で反例を与えて否定的に解決した. 極小対数的食違い係数を計算する因子の重み付き爆発による特徴付けは3次元以上では成立しないことが簡単に分かる.それでも,そのような因子の何らかの有界性は期待できると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非特異曲面上に限るものの,極小対数的食違い係数を計算する因子についての十分な性質が得られたからである.また,単純に境界因子を増やして対数的標準閾の性質を用いる手法が極小対数的食違い係数の研究には安直すぎることも分かったからである. 3次元以上でも因子の何らかの有界性は期待できて,3次元非特異代数多様体上の極小対数的食違い係数の諸問題への手掛かりとなるであろう.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,昇鎖律を始めとする極小対数的食違い係数の諸問題を研究する.特異点を固定して境界因子を動かす場合はイデアルの生成極限が利用できる.特に3次元非特異代数多様体上の昇鎖律について,残された極小対数的食違い係数1以下の部分を考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
外国出張費を若干抑えることができたためである.
|
次年度使用額の使用計画 |
6月の外国出張の費用の一部に充てる.
|