研究課題/領域番号 |
16K05100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川ノ上 帆 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (50467445)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 代数幾何学 / 特異点解消 / IFP |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,正標数の特異点解消に関して申請者の提唱するIFPに従って研究を進めた.申請時の研究計画においては,順調に進めば昨年度までに3次元埋め込み特異点解消の問題を解決し今年度から高次元の場合に取り組む予定であったが、研究を進めるにつれ3次元の場合でも事態は容易でないことが明確化した。一方,正標数の特異点解消の困難の大きな原因の一つとして爆発に際して剰余重複度が増加するMoh-Hauserの跳躍現象があるが,この振る舞いと曲面の場合のその克服について他の研究者との交流により新たな知見を得た.以下詳細を述べる. 5月から8月の三ヶ月間共同研究者であるPurdue大学の松木謙二教授が京都大学に滞在し,3次元埋め込み特異点解消について松木氏が提出したアルゴリズムを検証するという形で共同研究を行った.このアルゴリズムには幾つか場合分けが出てくるが,その全ての場合に不変量が互いに連携してうまく機能すること及びそれが跳躍現象の制御を与えることを確認する必要がある.現時点では幾つかの場合で非常に良く振る舞うことを確認した.しかし残念ながら跳躍現象に関する部分は未だ手付かずである. 一方,10月にHauser教授,Perlega氏との議論及びPerlega氏の博士学位審査のためにウィーン大学に滞在した.Perlega氏の学位論文は剰余重複度の定義を跳躍現象を回避するように修正することで曲面の場合の特異点解消を与えるものであり,曲面の特殊性はかなり使われているがその着想と概念的に自然な構成は大変参考になった.またPerlega氏が最近構成した剰余重複度が無限回増加する例を教えてもらうなど収穫の多い滞在であった. 研究の外部出力という点では,9月にベトナムのニャチャンで行われた日仏越特異点シンポジウムという国際会議において本研究に関する研究発表を行った.また松木氏との共著論文を出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度までに完成する予定であった3次元埋め込み特異点解消が未だ道遠しといった状況であるので遅れていると言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き正標数3次元多様体の埋め込み特異点解消の研究を進める.部分的な進展はあるので研究期間終了時までにこれが最終的な証明へと結実することを目指す.今年度に関して言うと,共同研究者の松木氏他とOISTとRIMSの共同で特異点解消のワークショップを主催する.その際にスペイン・オーストリアの同分野の研究者たちを招聘して議論をする予定であり,これが我々の研究に大いに有用であることを期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度海外出張に際して研究所や先方からサポートが頂けたことによる.今年度に主催する研究集会で招聘する研究者の旅費などに充てる予定である.
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