本年度の課題は主に 3 次元射影空間における 4 次超曲面上の階数 2 の ACM 束を分類することであった。この際、Gianfranco Casnati による一般の determinantal quartic(すなわち次数 1 の線形多項式を成分に持つ 4 次正方行列の行列式で定義される 4 次超曲面)の上の階数 2 の ACM 束の分類結果及び、その方針を基に determinatal でない 4 次超曲面上の階数 2 の ACM 束のチャーン類による分類に関する研究を行った。一般の detarminantal な 4 次超曲面はピカール格子が階数 1 の Ulrich 束と超平面切断により生成される。Gianfranco 氏は階数 2 の ACM 束のチャーン類をピカール格子の生成元を用いて記述し、更に Castelnouvo Mumford の regularity を用いて実現可能なものを絞り込む方法で分類したが、手始めに同様の方法でピカール格子が断面種数 3 の非常に豊富な直線束と楕円曲線のクラスにより生成される楕円 K3 曲面(4 次超曲面)上の階数 2 の ACM 束として可能なもののチャーン類を記述した。一方、K3 section に対する Brill-Noether 理論の観点から K3 曲面上の階数 2 の Lazarsfeld-Mukai 束(以下、LM 束)の分解に関する研究を行った。一般に与えられた偏極に関する階数 2 の ACM 束は偏極を十分多くテンソルすることで LM 束となる。従って、分解しない階数 2 の ACM 束を分類するにあたり、本研究では直線束の直和に分解しない階数 2 の LM 束の分類に着目した。特にそのような LM 束が直線束の拡張で表される為の条件を調べる為、前年度までに得られた必要条件及び、十分条件の精密化を図った。
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