研究課題/領域番号 |
16K05102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村井 聡 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (90570804)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 単体的複体 / 三角形分割 / f-列 / 彩色 |
研究実績の概要 |
凸多面体や多様体の単体分割の組合せ構造の研究は組合せ論の分野における重要な研究テーマの一つである。一方、四色定理に代表される彩色の研究も数学における重要な研究テーマである。本研究では、これら二つのテーマの両方に関連する研究となる、良い彩色構造をもつ単体分割の組合せ構造に関する研究を行っている。 今年度は多様体の単体分割の面の個数の下限に関する研究を行った。多様体の単体分割の研究においては、面の個数のような離散的な情報とベッチ数や基本群といった幾何的な情報との間にどのような関係があるかを調べることが重要である。今年度、Martina Juhnke-Kubitzke(オスナブリュク大学), Isabella Novik(ワシントン大学), Connor Sawaske(ワシントン大学)らとの共同研究で、balanced と呼ばれる良い彩色条件を持つ単体分割の面の個数とベッチ数との関係に関する研究を行い、研究代表者と Martina Juhnke-Kubitzke によって凸多面体の場合に示されていた balanced 一般下限不等式と呼ばれる不等式を多様体の単体分割でレフシェッツ性と呼ばれる特殊な代数的性質を満たすものに対して一般化することに成功した。本研究結果は、balancedな単体分割の辺の数の下限に関する Steven Klee と Isabella Novik の予想の肯定的な解決を特別な場合として含む強い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった balanced な単体分割の辺の個数の下限に関する Klee と Novik の予想を解決し、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はスタンレー・ライスナー環のレフシェッツ性の研究とその組合せ論への応用に関する研究を行う。単体分割の面の個数の研究はスタンレー・ライスナー環と呼ばれる環の研究と密接に関係しており、面の個数の研究を発展させるためには、スタンレー・ライスナー環の代数的な性質の研究を発展させることが必要不可欠である。特に、面の個数の下限に関する研究には環のレフシェッツ性と呼ばれる代数的性質が大きく関係することが知られている。 当面は a-balanced と呼ばれる良い彩色構造を持つ単体的凸多面体のスタンレー・ライスナー環のレフシェッツ性に関する研究を行う。このような環に対し、彩色構造を用いて良い多重次数構造を持つ巴系と呼ばれる一次式を取ることができるが、彩色構造から誘導される巴系を用いて環を0次元化した時、その環がいつレフシェッツ性を持つか、という問題を研究する。この問題は balanced な単体分割の面の個数の研究と深く関わっており、最終的には、レフシェッツ性を応用し、balanced 一般下限不等式と呼ばれる凸多面体の面の個数の下限に関する不等式を全ての多様体の単体分割に一般化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたドイツへの渡航費が先方負担となり、当研究費から支出する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた計画に加え、5月にメキシコで開催される国際研究集会「Ordinary and Symbolic Powers of Ideals」及び7月にスウェーデンにおいて開催される国際研究集会「 Lefschetz properties in algebra, geometry and combinatorics」に参加し、レフシェッツ性に関する研究についての情報収集を行う。今回生じた次年度使用額はこの二つの国際研究集会参加の為の渡航費として使用する予定である。
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