研究実績の概要 |
平成30年度においては以下のような研究を行った。以下では(X,L)をn次元偏極多様体、KをXの標準因子とする。(1) Xの次元nが5の場合について予想「もしK+(n-1)LがnefならK+(n-1)Lが大域切断を持つ」の考察をさらに進めた結果、少し弱い結果であるが「もしK+4LがnefならK+2LもしくはK+4Lが大域切断を持つ」ことを示すことができた。これにより2Lが大域切断を持つ場合にはn=5の場合に上記予想が正しいことが言えたことになり, Horingの結果について5次元の場合に少し一般化できたことになる。これについて論文を作成した。(2) tがn+1以上のとき, n次元偏極多様体の随伴束K+tLの大域切断のなす次元の下限について考察し, n=5かつLが大域切断を持つ場合に, 以前予想していた結果が成立することを証明することができた。これについての論文を作成中である。(3) Okounkov体の理論を用いて偏極多様体の不変量であるΔ-種数の下限の値に関して考察した。特に2次元の場合について詳しく調べ、Δ-種数の非負性の別証明などを与えることができた。考察した結果を論文として作成し、現在投稿中である。 なお、平成30年度に計画していた「3次元多重偏極多様体(X,A,B)に対して随伴束K+A+Bの大域切断のなす次元が2の時の(X,A,B)の分類に関する研究について」と「n次元偏極多様体(X,L)に対し、K+nLの大域切断のなす次元が2となる(X,L)の分類の研究」については現在研究途中であり、次年度に引き続き研究を継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針は以下のものである。(1) Xの次元nが5の場合について予想「もしK+(n-1)LがnefならK+(n-1)Lが大域切断を持つ」の考察をさらに進めていく。(2) 平成30年度に計画していた3次元多重偏極多様体(X,A,B)に対して随伴束K+A+Bの大域切断のなす次元が2の時の(X,A,B)の分類に関する研究を引き続き行う。(3) 平成30年度に計画したn次元偏極多様体(X,L)に対し、K+nLの大域切断のなす次元が2となる(X,L)の分類の研究を引き続き行う。(4) Okounkov体の理論を用いて3次元偏極多様体のΔ-種数の下限に関する考察を行う。(5) 上記の研究の過程で新たな研究課題が生じた場合には、それについて研究を行う。
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