研究実績の概要 |
Xをn次元非特異射影多様体, LをX上の豊富な因子とする。 このとき(X,L)を偏極多様体と呼ぶ。また, Lがnefかつbigのとき, (X,L)を準偏極多様体と呼ぶ。令和2年度の取り組みにおいても, Beltrametti-Sommese予想「もしK+(n-1)LがnefならK+(n-1)Lが大域切断を持つ」に関連する問題の考察をさらに進めていった(ここでKはXの標準因子を表す)。 まず, tがn+1以上の整数のとき, n次元偏極多様体の随伴束K+tLの大域切断のなす次元の下限について考察し, n=5かつLが大域切断を持つ場合に, 以前予想していた結果が成立することに関する論文を昨年度作成して, その後論文を投稿していたが, 学術雑誌に掲載されることになった。 さらに, 令和元年度にXの標準因子が数値的に自明である場合のn次元準偏極多様体(X,L)において, n-3以上の任意の整数mに対してK+mLは大域切断を持つことを証明し, 論文を作成したが, 令和2年度に学術雑誌に投稿して, 掲載されることになった。 そして, 偏極多様体の不変量に関する応用として定義される半順序集合の不変量を用いて, 順序を全く持たない集合について不変量を用いた特徴づけを行うことに成功した論文が受理され, 掲載された。 また, (X,L)が偏極多様体で, Xの反標準因子がnefかつbigとなる場合について考察した。その結果, Xの次元が9以下であり, さらにXの反標準因子が大域切断を持つときにBeltrametti-Sommese予想が成り立つことを示すことに成功した。また, Xの反標準因子がnefかつbigであり, かつ大域切断を持つという仮定の下で, 申請者が以前予想したことが一般次元において成立するということを示すこともできた。上記結果については投稿予定である。
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