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2016 年度 実施状況報告書

代数曲線族の不変量並びに特異点に関連する高次元連分数の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K05104
研究機関東北学院大学

研究代表者

足利 正  東北学院大学, 工学部, 教授 (90125203)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード連分数 / 商特異点 / トーリック幾何 / ファイバー空間 / 一般型曲線 / 局所不変量 / 自己同型 / 指標
研究実績の概要

研究目的として掲げた下記の2テーマに分けて述べたい。
(1) 代数曲線族の不変量の研究
非超楕円的種数3の族のファイバーのHorikawa指数の決定問題に取り組み, 論文「Towards Horikawa index of genus three via signature divisor」(計49ページ)を作成した。現在最終推敲中でその後すぐ投稿したい。この論文では,モジュライ点がDeligne-Mumford コンパクト化の高々余次元1の特異点跡に入る場合について, この不変量を決定した。我々の方法は, 2009年に吉川謙一氏と共に示したDeligne-Mumford コンパクト化上の符号数因子の方法と, 筆者が[Comment. Math. Helv., 2010] で示した符号不足数の方法を組み合わせるものである。 証明の道具として, リーマン面の自己同型の表現に関するEichler 跡公式を, 安定曲線の自己同型にある意味で拡張することを行った。その際開発した方法自体, 今後の発展のための有効な手段となりうると考えている。
(2) 特異点と高次元連分数方面の研究
投稿中の論文「Multi-dimensional continued fractions for cyclic quotient singularities and Dedekind sums」を査読者とのやりとりの中で, 旧版の計34ページを今回計47ページに大幅改訂した。これは巡回商特異点のFujiki-Oka解消を連分数の立場でその幾何的意味を解釈し, 且つDedekind和への応用を与えるものである。その途中で, 古典的な Jacobi-Perron 連分数と我々の連分数との「質的な」違いを示す新しい概念の拡張も得られた。それを基に今まで行き詰まっていた数論的応用に関する今後の展望も垣間見えてきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実績欄の項目 (1), (2) に沿って述べたい。
(1) 退化ファイバー芽のモジュライ点が超楕円跡に入る場合が本質的であり, この場合次のように考察を進めた。対応する位相モノドロミーは石坂氏(2004)により分類されているが, それは超楕円的な非特異または Lefschetz 曲線の自己同型作用に読み替えられる。
問題はモジュライ写像の像と超楕円跡の局所交点数の計算に帰着され, それはこの作用に関する微分形式への表現の指標を明示的に求めることになり, これを実行した。その際, Rademacher-Dedekind和の計算を有効に用いた。その意味で着実な進歩状況と言える。
(2) 我々のn次元連分数は, n個からなる有理数の組に対して, ある種の多重ユークリッド互除法を反復合成した結果を, 剰余および切り下げ多項式と呼ぶ非可換多項式の中に書き下すものである。
これを無理数を含む一般の実数の組に拡張すると, あるn変数非可換形式ベキ級数が生じる。現在標準的な高次元連分数として流布しているJacobi-Perron連分数およびそのいくつかの改訂版は, 我々の立場ではある意味この中の「1次元部分形式ベキ級数」と解釈できる。その意味でこの連分数はより広い概念を内包しており, これを捉えた点が一つの進歩状況と言える。

今後の研究の推進方策

同様の項目 (1), (2) に沿って述べたい。
(1) モジュライ点が余次元2以上の特異点跡ストラタに入る場合についても種数3のHorikawa指数を明示的に決定し, 1990年からの懸案であったこの問題に一応の決着をつけるよう試みたい。そのための道具はすでに出揃っており, 細部の計算のみが残されているので, これを実行したい。あわせてCastelnuovo直線からの地誌学的変動が, 一般型代数曲面の性質をどう変化させていくかをいくつかの観点から観察したい。
(2) 3次代数体の基本単数の組を与えて, それに対し我々の連分数展開を実行すれば循環的になるのではないかという問題に再度挑戦してみたい。ここに循環するとは「進歩状況(2)」の欄で述べた形式ベキ級数が循環的になること, つまり巡回群作用を許容するということである。この問題は我々の観点からは非有理錐の有理錐による「近似的トーリック幾何」と捉えられる。また3次元Hilbert モジュラーカスプ特異点の明示的解消問題とも結びつき, これらの視点をも鑑みつつ研究を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

支出項目「旅費」について当該計画より若干の予算超過が生じたため。

次年度使用額の使用計画

この額を支出項目「旅費」に組み込んで使用する計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [学会発表] Horikawa index of genus three via signature divisor2017

    • 著者名/発表者名
      足利 正
    • 学会等名
      Mini workshop ''Fibered Varieties" in honor of Prof. M. A. Barja
    • 発表場所
      大阪大学大学院理学研究科(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2017-03-22
    • 招待講演
  • [学会発表] Log Eichler trace formula and hyperelliptic multiplicity2017

    • 著者名/発表者名
      足利 正
    • 学会等名
      代数幾何学ミニワークショップ
    • 発表場所
      八千代プラザ(兵庫県多可郡多可町)
    • 年月日
      2017-01-07
    • 招待講演
  • [学会発表] Horikawa index of genus 3 and hyperelliptic multiplicity2016

    • 著者名/発表者名
      足利 正
    • 学会等名
      研究集会「代数曲線と曲面及びその周辺」
    • 発表場所
      大阪大学大学院理学研究科(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2016-11-26
    • 招待講演
  • [学会発表] Horikawa index of genus three via signature divisor2016

    • 著者名/発表者名
      T. Ashikaga
    • 学会等名
      Seminar on Algebraic Geomtry
    • 発表場所
      East China Normal Univ. (Shanghei, China)
    • 年月日
      2016-09-06
    • 招待講演
  • [学会・シンポジウム開催] Branched Coverings, Degenerations, and Related Topics 20172017

    • 発表場所
      東北学院大学多賀城キャンパス
    • 年月日
      2017-03-07 – 2017-03-11

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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