研究課題/領域番号 |
16K05105
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
細野 忍 学習院大学, 理学部, 教授 (60212198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カラビ・ヤウ多様体 / ミラー対称性 / 双有理幾何学 / モノドロミー / 射影幾何学 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画に従って,完全交叉型のカラビ・ヤウ多様体に観察される双有理幾何学とミラー対称性に関する研究を実施し,幾つかの興味深い事例を見つけることが出来た.また,国内外の研究集会で発表を行い,研究者との討論を行った結果,理論的な定式化の概要が明らかになり,結果を整理した論文の発表に向けて取り掛かっている段階にある.
完全交叉型のカラビ・ヤウ多様体の中に,特に古典的な射影幾何学においてReye合同と呼ばれる幾何に関連するものがある.このカラビ・ヤウ多様体は,3つの双有理モデル(双有理であるが双正則でないカラビ・ヤウ多様体)を持つことが分かっている.一方で,このカラビ・ヤウ多様体にミラー対称なカラビ・ヤウ多様体の族(ミラー族)を構成すると,最大退化と呼ばれる多様体の退化が3箇所で実現することが観察され,3つの双有理モデルと対応する.このような,対応はミラー対称性で度々観察されるものであるが,本年度の研究では,この対応関係を数学的により深く調べることを行い,以下の新しい視点を得ることが出来た:双有理幾何学では,射影埋め込みに関係するケーラー錐を少し大きい錐(movable cone)に拡張して考えることが出来る.ケーラー錐はミラー対称のもとで,ミラー族の退化点で定義されるモノドロミー冪零錐に対応する.この対応関係を念頭に,Reye合同に関するカラビ・ヤウ多様体とそのミラー族を考察してみると,ミラー族の3つの退化点それぞれで定義されるモノドロミー冪零錐が自然な形でつながって一つの大きな錐を定めることが明らかになった.1例を詳しく解析した結果であるが,類似の別の例でも同様な構造を確認することが出来て,一般性を持った定式化が可能であることの示唆を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した1つの完全交叉型カラビ・ヤウ多様体とそのミラー族の幾何学の解析を概ね完了することが出来た.加えて,類似の例が見つかり,双有理幾何学とミラー族の幾何学について更に深めていく手がかりを得ることが出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
ミラー族に見られる退化の幾何学と双有理幾何学の対応を,視野を広めて「双有理ではないが導来同値である」場合を含めて発展させていく.また,ミラー族のモジュライ空間のケーラー幾何学の大域的性質とグロモフ・ウィッテン不変量の母関数の研究とも関連させていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機ソフトウエアの更新を予定していたが,アップグレードを先送りして次年度以降に得られる最新のものとしたいと考えるため.
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次年度使用額の使用計画 |
計算機ソフトウエアの更新,および国外研究者の招聘旅費として使用する.
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