射影的かつセミステイブルな対数的スムース退化 X ---> * の相対対数的ドラームコホモロジー群が持つ混合ホッジ構造が、カタニ・カプラン・シュミットの偏極混合ホッジ構造と一致することを示すことが本研究の中心目標であった。 最初のステップとして、上記混合ホッジ構造のウェイトフィルトレーションがモノドロミーウェイトフィルトレーションに一致することは、平成29年度前半までの研究によって示されていた。さらに、平成29年度後半には、相対対数的ドラームコホモロジー群上に適切な「偏極」を構成するための新たな着想を得ることができた。 平成30年度は、この新たな着想の細部を確認・検証した上で、それを論文としてまとめることに取り組んだ。その過程において、この新たな着想に基づいて平成28年度からの研究をすべて整理し直し一つの論文とした方が全体の見通しが良くなることに気が付いた。そこで、執筆中であった平成29年度前半までの結果をまとめた論文を全面的に書き直すべきであると判断し、新たな論文執筆に取り組んだ。細部の検証作業と同時進行であるため、思うように進捗しなかったが、現在ほとんど完成に近づいており、可能な限り早い出版を目指している。 一方、これまで得られた研究の対数幾何に応用として、対数的点上の対数的スムース射が対数的ホッジ構造を定めるか、という問について中山能力氏と共同で研究した。残念ながら現時点では、対数幾何的な条件だけでは、対数的ホッジ構造の枠組みに本研究の成果を完全に移すことができず、部分的な結果を得るに留まった。この研究成果については、中山能力氏と共著論文を執筆し、現在投稿中である。
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