研究課題/領域番号 |
16K05110
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
吉田 健一 日本大学, 文理学部, 教授 (80240802)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有理特異点 / Rees 代数 / almost Gorenstein ring / pg ideal |
研究実績の概要 |
2次元の有理特異点の整閉イデアルのブローアップ代数は非常によい構造を持つことが知られている。一方で、高次元の有理特異点についての理解は十分ではない。応募者はこの点に留意しつつ、有理特異点とその周辺について研究を続けてきた。例えば、特異点解消を使わずに定義できるF有理特異点の概念を導入し、2次元有理特異点を単純特異点とみなして、ウルリッヒイデアルとウルリッヒ加群の分類を行った。最近、概ゴレンシュタイン性の概念が導入され、2次元有理特異点は概ゴレンシュタイン局所環であることが証明された(後藤ら)。この事実に注目し、2次元有理特異点のイデアル論を拡張しつつ、ブローアップ代数の概ゴレンシュタイン性を研究することが本研究の目的である。 平成28年度の研究実績としては、後藤四郎氏、谷口直樹氏、松岡直之氏らの協力の下で、2次元の正則局所環における成果を一般化して、 2次元正規特異点のある種の「良イデアル」のブローアップ代数の概ゴレンシュタイン性を証明した。また、高次元の正則局所環の極大イデアルのべきに注目して、その概ゴレンシュタイン性を研究し、概ゴレンシュタイン性の次数付き版の定義がやや強すぎることを理解する例を多く提供するような定理を証明することができた。 同年度の後半に予定していた、3次元トーリック環における概ゴレンシュタイン環の分類については少々遅れている。現在、3次元巡回商特異点に焦点を絞って、その環論的構造を明らかにし、多くの例が提供できる環境作りにも力を入れている。 今後はコーエン・マコーレーでない環の概ゴレンシュタイン性などにも焦点を当てていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3次元の商特異点、または、3次元トーリック特異点に関する既存の研究成果が十分ではないことが分かり、重複度、次元、depth の公式など基本的な不変量の計算方法を作りだし、種々の定理を構築する必要性が生じたためである。また、ベトナムの研究グループとの連携の日程が延期になったことも関係している。
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今後の研究の推進方策 |
3次元の巡回商特異点を次の視点から詳しく研究することにより、本来の対象である有理特異点の概ゴレンシュタインブローアップ代数の研究に生かす。 (1)トーリック環としての構造。特異点解消の構成。標準加群の構造(スタンレー)。 (2)商特異点の理論を用いた標準加群の構造。 さらに、Hilbert-Poincare 級数なども利用して、一般次元の巡回商特異点の環論的不変量(重複度など)を計算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初昨年度1月に予定していたベトナムにおける研究集会が、先方の都合により日程が変更になり、参加することができなかったため、残額が生じた。その分は2017年度9月に行うことで調整中ある。
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次年度使用額の使用計画 |
研究集会として、沖縄におけるRIMS合宿型セミナー主催、7月に共同研究者の TONY Puthenpurakal 氏の招聘、9月ホーチミンにおける研究集会(講師として参加予定), 京都大学における可換環論シンポジウム、札幌における可換環論セミナーなどの参加を予定している。 また、整数論と可換環論の共同研究が新たに生まれつつあるため、名古屋大学における勉強会などを中心に参加することにより、新たな知見を得る予定である。
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