シンプレクティック多様体の不変量について、平成28年度からの3年間の進展を踏まえ、凸領域のHofer-Zehnder容量の研究から派生した凸体のvolume productについて重点的な研究を行った。研究計画の最終年度である令和元年度は、主に以下の2つの成果があった。 1.ユークリッド空間の中心対称な凸体のvolume product(Mahler体積)の下からの最良評価の問題はMahler予想と呼ばれ、凸幾何学の古典的な未解決問題である。2次元の場合は1938年にMahler自身により解かれている。柴田将敬氏(東京工業大学)との共同研究により、このMahler予想について3次元の場合を完全解決し、平成29年度にプレプリント(arXiv:1706.01749)を発表していた。この原稿を大幅に改訂したものがDuke Mathematical Journalに掲載された。また、証明の概要について、台湾のPenghuで開催された国際学会East Asia Symplectic Conference 2019において招待講演を行った。 2.3次元Mahler予想の解決のために導入した「符号付体積評価」の方法を拡充して、Mahler予想の枠組みを離散群作用つきの場合に拡張した問題に柴田氏と共同で取り組んだ。3次元の場合、3次直交群の離散部分群の作用をもつ凸体のvolume productの下からの最良評価と等号成立条件が、先行研究に含まれない5つの系列の場合に得られている。この内容について、チェコで行われた国際学会DGA2019--Differential Geometry and its Applicationsにおいて一般講演を行った。
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