研究実績の概要 |
申請時では国際研究集会IECMSA2020, ICDG2020での成果発表を予定していたが、感染症の影響で集会の開催が延期・中止となったために、後者の代替措置として参加予定者による研究論文を集める形で報告論文集 New Horizons in Differential Geometry and its Related Fieldsを World Scientific 社から発刊し、研究者自身もその中で研究発表論文を掲載した。 頂点と辺とからなる1次元構造物のグラフに複素構造を導入するために、主グラフと補助グラフという2種類の辺構造を持つケーラーグラフの概念を過去の研究で導入した。このグラフ上のランダム・ウォークとして主辺と補助辺とが交互に現れる物を考えたが、辺の順序が指定されているために、ケーラーグラフは無向グラフでありながら有向グラフの性質が強く出現する物となっている。リーマン多様体の比較定理に対応させるべく代表的なケーラーグラフを得るために、複素空間形上のケーラー磁場による球面平均化作用素が対称作用素になることに注目して、ランダム・ウォークの生成作用素が対称になるように、正則で有りかつ主グラフと補助グラフの隣接作用素が可換であるという正規性を導入した。この性質は対称性の高さを示すものと考えることができる。今回の研究では,このような正規ケーラーグラフをたくさん構成できることを平面上で回転・反転不変性を利用したり、積グラフを構成するデカルト積・強積・テンソル積・辞書積という古典的な手法を応用したりすることで示し、更にそれらの連結性や2部性などの性質を隣接作用素のスペクトラムの性質を調べることで示した。
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