研究課題/領域番号 |
16K05127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
入谷 寛 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20448400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子コホモロジー / ミラー対称性 / グロモフ・ウィッテン理論 / クレパント解消予想 / トーリック多様体 / ガンマ構造 / ランダウ・ギンズブルグ模型 / 準保型形式 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究ではトーリック軌道体の同変大量子コホモロジーに対するホッジ理論的ミラー対称性が明らかになっていた.本年度はその結果を使って,トーリック軌道体のクレパントではない双有理変換の下での量子コホモロジーの変化を調べた.クレパントな双有理変換(標準類を保つ変換)の下で,トーリック軌道体(およびその中の完全交叉)の量子コホモロジーが解析接続で移りあうことは報告者らの過去の研究でわかっていた.一方,クレパントではない双有理変換の下ではコホモロジーの階数が変化するため,量子コホモロジーが単なる解析接続で移りあうことは期待できない.今年度はトーリック軌道体のミラーのランダウ・ギンズブルグ模型を対数的退化を持つ点を込めて大域的に記述し,またそのことによってクレパントではない変換で移りあうトーリック軌道体の形式的量子D加群の間に直和分解の関係があることを証明した. またTom Coates氏との共同研究では局所射影平面の高種数グロモフ・ウィッテンポテンシャルが準保型関数になることを示し,さらにこの場合のクレパント解消予想を全ての種数で解決した.本研究では3レベル構造を持つ楕円曲線のモジュライ空間上にある種の「フォック空間」の層およびその大域切断を構成し,その大域切断が適当な極限点の周りで局所射影平面およびそのなかの射影平面をつぶして得られる軌道体のグロモフ・ウィッテンポテンシャルと同一視されることを示した.これはAganagic,Bouchard,Klemmの予想を解決するものである. 以上の研究結果は次年度以降に発表の予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トーリック軌道体のミラーの大域的な理解がさらに進み,クレパントではない双有理変換の下で量子コホモロジーがどのように変化するかについての研究が進んだ.また高種数におけるクレパント解消予想を局所射影平面の場合に解決し,グロモフ・ウィッテンポテンシャルの大域的な構造が明らかになっている.
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今後の研究の推進方策 |
クレパントではない変換の下での量子コホモロジーの変化の研究をさらに進める.特に形式的量子D加群だけではなく,解析的な量子D加群の間の関係も調べていく.また量子K理論や同変量子コホモロジーに現れる差分構造についても研究を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,想定していたよりも研究発表旅行をしなかったこと,また開催した国際研究集会での支出が少なかったことが挙げられる.次年度は研究旅行および国際研究集会の開催を予定している.
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