研究実績の概要 |
ガンマ整構造とグロモフ・ウィッテン理論の関係について多くの成果が得られた.特にガンマ整構造とトロピカル幾何の関係が明らかになった点は大きい. 以前より継続していたTom Coates氏との共同研究において,局所射影平面に対するグロモフ・ウィッテンポテンシャルの大域的な性質を調べ,それが準保型形式になることを証明していたが,本年度はその結果を論文にまとめプレプリントとして公表した.本論文はKyoto Journal of Mathematicsに掲載予定である. またMohammed Abouzaid, Sheel Ganatra, Nick Sheridan氏らとの共同研究では,トロピカル幾何とStrominger-Yau-Zaslow予想の観点からガンマ構造が現れる理由を調べた.(概)複素多様体の特性類であるガンマ類はリーマンゼータ値を含む超越的なコホモロジー類である.カラビ・ヤウ多様体に対するミラー対称性の文脈では,ガンマ類はミラー多様体の周期の(極大複素構造極限での)漸近挙動に現れることが観察されていた.本研究では,ミラー多様体の周期をトロピカルアメーバとして現れるトロピカル多様体上に局所化することにより,その漸近挙動にゼータ値や元々の多様体のオイラー数が現れる理由を解明した.具体的には,Batyrevによるカラビ・ヤウ超曲面のペアについてミラー多様体の周期の漸近挙動にガンマ類が現れることを示した.本結果はプレプリントとして公表している. また非クレパントな双有理変換の下で量子コホモロジーがどのように変化するか調べる研究も進めた.非クレパント変換の下で,トーリック軌道体の量子コホモロジーD加群は形式的に分解することを示していたが,本年度は形式的分解の解析的な持ち上げがガンマ構造を通じて,K群のOrlov型の分解と関係することを示した.本結果は来年度以降に発表する予定である.
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