実リー環の複素化を係数制限することで実リー環を得られるが、この実リー環は複素リー環になる複素構造以外に多くの可積分な複素構造をもつ。またリー環上の複素構造は対応するリー群上の左不変な複素構造を誘導し、さらに等質空間への複素構造を誘導する。本研究では、複素構造をもつ一般のベキ零多様体の場合について非退化2次形式との関連を考察しながら、複素幾何的構造について研究をおこなった。その結果、複素構造をもつベキ零多様体の場合に正則ベクトル場のなすリー環とドルボーコホモロジー群との対応が明確になり、さらに擬ケーラー構造を持つ場合のホッジ数間の関係式における必要条件が得られた。これにより、今までより容易な計算により擬ケーラー構造がもつかどうかが判定できるようになった。特に実ベキリー環の複素化を係数制限することで得られるベキ零リー環の場合に詳しく研究し、複素構造(各接空間における線形変換)とベキ零多様体の複素座標について詳しく研究をおこなった。これにより、ベき零多様体の正則ベクトル場のなすリー環の次元の評価ができるようになり、擬ケーラー構造をもつための必要条件を最初の実ベキ零リー環を用いて述べることが可能となった。また複素構造の変形空間の具体的な座標を用いた計算が可能となり、異なる連結成分にある複素構造の比較が、各々の複素構造におけるホッジ数の比較以外にも可能となった。以上のようにある種の複素構造をもつベキ零多様体の場合には、ホッジ数、正則ベクトル場、変形空間が具体的に計算可能となった。
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