研究課題/領域番号 |
16K05132
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
阿賀岡 芳夫 広島大学, 理学研究科, 教授 (50192894)
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研究分担者 |
田丸 博士 広島大学, 理学研究科, 教授 (50306982)
澁谷 一博 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00569832)
奥田 隆幸 広島大学, 理学研究科, 助教 (40725131)
橋永 貴弘 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 助教 (40772132)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リーマン多様体 / 等長埋め込み / 微分方程式 / ガウス方程式 / コダッチ方程式 / 不変式 |
研究実績の概要 |
今年度は次の二つの課題について研究を行った。 1.局所等長埋め込みの存在・非存在性について:3次元リーマン多様体を4次元ユークリッド空間に埋め込む場合について、リベルツの条件式(曲率に関する1階の偏微分方程式で、コダッチ方程式を導くことを可能とする条件式)を局所座標を用いて表現した。一般にこれは膨大な長さの式になるが、リーマン計量が各点で対角形であり、かつその対角成分が局所座標のうちの1つを使った1変数関数になる場合、比較的コンパクトな形(5~6行程度の長さ)にまとめ直すことができた。この場合、リベルツの条件式はリーマン計量に関する線形単独2階常微分方程式に帰着されるが、この微分方程式の一般解を求めることに成功した。この事実は、リベルツの条件式が可積分系の立場から見て、非常に素直で考察するに値する微分方程式であることを示唆している。またこの結果、非常に多くのリーマン計量について局所等長埋め込みの存在性が内在的な量のみによって示されたことになる。 2.等質リーマン計量の局所等長埋め込みと可積分条件:3次元ユニモジュラーリー群上の左不変計量について、ガウス方程式の可解性と同値となる曲率の3次不変式を、リー環の構造定数とリーマン計量(この場合は、3次対称行列)とを用いて表す公式を得た。不思議なことに、この式の分母と分子は相当に簡約化され、最終的には分子は構造定数・リーマン計量の成分のそれぞれ6次式の形となる。ただ、この式も一般に膨大な長さの式になるため、これを表現論的にみてまとまりのよい形に整備し直す課題が残されている。3次元の場合はリー環の分類結果を用いることにより、ガウス方程式の可解性については既に最終的な結果が得られていたが、この不変式を用いると、分類結果に依存しない証明が可能となる。またこの結果、同様の問題の高次元版の解法への道筋が明瞭になった点も大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年5月に提出した「研究実施計画」には (A)、(B) 局所等長埋め込みの存在性・非存在性を示すこと、(C) 研究全体の基盤を成す部分について研究を進める予定と記した。課題(A)、(B) に関しては、特別なケースではあるが、(通常の感覚では解けそうにないほどに長い式の)リベルツの微分方程式を解くことに成功し、これにより4次元ユークリッド空間に等長埋め込み可能な3次元リーマン多様体のクラスが一部明確になった。更に一般的な計量の場合、あるいは次元の高い場合の考察が未着手の課題として残されてはいるものの、可積分な微分方程式のクラスを見出した点において、大きな前進が得られたといってよい。課題(C) に関しては、一般次元の場合の高階曲率テンソル空間上の多項式空間の既約分解公式を計算し、データを蓄積しつつある状況にある。この課題に関しては、まだ具体的な成果が得られるまでには至れていないが、研究は順調にすすんでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
3次元リーマン多様体を4次元ユークリッド空間に埋め込む場合については、(曲率が退化する場合を除いて)「理論」はほぼ完成したといってよい。ただし、主定理の証明において、計算機を用いて確認する部分がまだ数か所残されており、この難所を古典的不変式論で有名な「記号的方法」を用いて解決し、最終的には計算機なしの証明に至る方策を見出したい。この理論が全面的に完成した暁には、高次元・高余次元の場合の等長埋め込み問題のみならず、他の多くの幾何学的課題への応用が期待される。 研究分担者には様々な場面でアドバイスを頂いているが、今後とも密な関係を保ちつつ本研究をすすめてゆきたい。
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