研究課題/領域番号 |
16K05133
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内藤 博夫 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (10127772)
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研究分担者 |
井ノ口 順一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (40309886)
間下 克哉 法政大学, 理工学部, 教授 (50157187)
中内 伸光 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (50180237)
近藤 慶 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (70736123)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リーマン幾何 / 対称空間 / 曲面論 / グラスマン幾何 / 等質部分多様体 |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成28年度の研究実施計画は,研究目的の最初の課題 A「対称空間上のグラスマン束の等長変換軌道の中から,実質的な等質的曲面論(グラスマン幾何的曲面論)の枠組みを提供する軌道を分類あるいは抽出するための判定理論を構築する」に取り組むために,グラスマン幾何的曲面が存在するための条件を,対称空間の正規座標を用いて,具体的な準線形1階偏微分方程式系の解の存在条件として記述した。その記述表現から,その方程式系には,対称空間のイソトロピー表現の影響を受けた微分を含む項と対称空間の曲率の影響を受ける微分を含まない項からなることが分かった。この結果は,偏微分方程式に係るサポートを担当する学内研究分担者からの意見等を踏まえながら,研究経過として口頭発表した(研究代表者の研究業績)。 また,次の研究課題 B「対称空間内の実質的なグラスマン幾何的曲面論の枠組みにおいて,その曲面論を考察する」に取り組むために,研究分担者井ノ口との共同研究として,対称空間ではないが,3次元ノンユニモジュラー・リー群の左不変計量の枠組みに対し,その実質的なグラスマン幾何的曲面論の枠組みの決定(Aに関連)及びその曲面論の考察(Bに関連)を行った。平成27年度から取り組まれている共同研究であるが,平成28年度に成果の最終確認を行い投稿準備が整った。(平成29年度に投稿予定)この成果は,これまでの研究成果と併せて,3次元リーマン等質空間のグラスマン幾何的曲面論の完全分類を与えるとともに,本研究課題においては,研究アイディアを提供する準備研究の位置づけにある。 そのほか,本研究課題への参画を通して,広く幾何学分野における各研究分担者による研究成果の発表(各研究分担者の研究業績)が関連研究として行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の「研究目的」は,上記「研究実績の概要」で記したように,実質的なグラスマン幾何的曲面論の枠組みの決定(A)及びその曲面論の考察(B)である。 研究課題Aについては,グラスマン幾何的曲面論が実質的であるための判定条件が,具体的な準線形1階偏微分方程式系を用いて表せたことにより,解の存在に対する解析的な考察が必要であることのほか,その考察方法として,対称空間の表現論的性質及び幾何学的性質とどのように関わっているかを明確にする必要があることなど,今後の研究方針の具体的テーマが浮かび上がってきた。研究初年度である平成28年度に,明確な研究方針が定まったという点で,この課題については順調に進展していると言える。 また,研究課題Bについては,研究課題Aの進捗状況を踏まえて,本格的には次年度以降に取り組む予定であるが,その際に研究方法のアイディアが参照できると期待される「左不変計量を持つ3次元リーマン等質空間のグラスマン幾何的曲面論」の研究が完成したことによって,研究課題Bの準備状況が充実した。この意味で,研究課題Bについては,おおむね順調に進展していると言える。 以上より,本研究全体としては「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題Aについては,平成28年度の研究で,課題の解決が具体的な準線形1階偏微分方程式系の解の存在条件の解明に帰着され,その方程式及び解の存在条件の表現論的及び幾何学的解釈が必要と認識された。平成29年度以降の研究推進方策として,28年度に得られた知見を点検・評価しながら,コンパクトリー群や階数1の対称空間など具体的な対称空間をモデルにして,より詳細な状況を明らかにすることを目指す。また,研究課題Bについては,詳細が明らかにされた上記モデルから順次,そのグラスマン幾何的曲面論を考察し,一般の対称空間の場合の知見を蓄積することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として約7万円程度が生じ平成29年度に繰り越した。そのうち約6万円が学外分担者間下の分担分として,また,残り(少額)を研究代表者の管理分として繰り越した。繰り越し6万円については,平成29年度において,対称空間の表現論的見地から研究代表者をサポートする学外分担者間下の役割分担を充実し,例外型対称空間についてもさらに研究推進を図るため,平成29年度配分予定の15万円と併せて21万円を集中配分することとしたため。また,繰り越しの残りについては,平成28年度の研究実施に伴って少額の残金として生じたもので,次年度の研究実施計画の中で合算して使用することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由で記載したように,繰り越し6万円分は,主に,学外分担者間下の情報収集及び成果発表のための旅費の追加分として使用する予定である。また,研究代表者の管理分として繰り越した少額は,消耗品費に合算して使用する予定である。
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