研究課題/領域番号 |
16K05135
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
愛甲 正 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (00192831)
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研究分担者 |
小櫃 邦夫 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00325763)
田中 恵理子 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (70376979)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Rizza構造 / Rizza-negative / 複素フィンスラー計量 |
研究実績の概要 |
(1)コンパクトな複素多様体M上のRizza構造を許容する正則ベクトル束Eの微分幾何学の研究:複素正則ベクトル束の各ファイバー内の原点を含む強擬凸なbalanced domainから一意的なRizza構造が定まる.正則ベクトル束がnegativeであるための必要十分条件は負曲率のRizza構造を許容すること,すなわち,Rizza-negativeなことである。この条件はGriffith-negativeよりも強い。このことから「Rizza-negative⇒Griffiths-negative⇒negative」がわかる.逆問題の「negative⇒Griffiths-negative」についてはDemailly-Skodaの結果(1980)などが関連すると思われるが,いまだに解決できていない.この逆問題を研究するために,特殊な場合として,Rizza構造が複素Berwaldであって,しかもこれに同伴するHermite構造がGriffiths-negativeならばRizza-negativeであることを証明することができた。特に,Mが複素射影直線の場合には正則ベクトル束は正則直線束の正則直和に分解することから「Rizza-negative⇔Griffiths-negative⇔negative」であることを示した。またコンパクトなリーマン面上のHermiteベクトル束がEinstein条件を満たす場合も同様な結果が得られると予想できる。 (2)実Finsler計量の共形的平坦性を特徴付ける曲率テンソルの構成: 正則ベクトル束のRizza構造の場合はこの研究課題はすでに終了している。実多様体Mの接束TMのFinsler計量の共形的平坦性を特徴付ける曲率テンソルとして片側射影変換で不変な曲率テンソルを構成し,その消滅が実Finsler計量の共形的平坦性を特徴付けることを証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度も前年度に引き続き,(1)コンパクトな複素多様体上の,Rizza構造を許容する正則ベクトル束の微分幾何学と,(2)実フィンスラー計量を許容する多様体の共形幾何学を主に研究した。 (1)の成果については国際会議23rd International Summer School on Global Analysis and Applications(2018年08月, Brasov, Romania)において,「Negative vector bundles and complex Finsler geometry」として発表講演を行い、論文の形で投稿する準備はほぼ整っている。 また(2)の共形幾何学については、国内会議第53回フィンスラー幾何学シンポジウム(2018年11月,福岡工業大学)において,「One-sided projective changes of Finsler connections」として発表講演を行なった。この結果については、詳細な検証を行い、論文投稿の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き以下の項目について,研究代表者と研究分担者が共同で研究を遂行する予定である。 研究計画【A】Rizza構造を許容する正則ベクトル束のnegativityについての研究はD. Wu and S.T. Yauによる論文「Negative holomorphic curvature and positive canonical bundle」での研究結果のフィンスラー幾何学への拡張が重要であり,この研究課題については主に研究代表者(愛甲)が研究を進める。 研究計画【B】フィンスラー幾何学における双対幾何学と共形幾何学に関する研究については,片側射影変換で不変な曲率テンソルが重要な役割を果たすことがわかってきた。この不変な曲率テンソルを介して双対幾何学との関連を,研究分担者(田中恵理子氏)の協力を得て進める予定である。特に、理論物理への応用について共同で研究する。 研究計画【C】正則ベクトル束の射影化束をケーラー多様体の族として扱う研究については,この射影化束の全空間をコンパクト複素多様体として捉えて,その構造層を係数とするコホモロジー群を用いて,定空間が射影代数的であるための十分条件を求めた。この条件について、その幾何学的な意味や有用性について研究分担者(小櫃邦夫氏)の協力を得て検証を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はルーマニアでの国際会議での講演発表と第53回フィンスラー幾何学研究集会(国内会議)での講演発表のために旅費を計画していたが、当初予定していた閣内会議が東海大学札幌札幌校(札幌市)から福岡工業大学(福岡市)での開催に変更になったため、33,370円の剰余金が発生した。他の研究集会への出席も考慮したが、その旅費には不足するため、次年度に繰越すことにした。この繰り越し額を平成31年度の論文掲載費等の支出予定に計上した。
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