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2019 年度 実施状況報告書

変形量子化で構成される非可換ケーラー多様体上のゲージ理論の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K05138
研究機関東京理科大学

研究代表者

佐古 彰史  東京理科大学, 理学部第二部数学科, 教授 (00424200)

研究分担者 長谷部 一気  仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (60435469)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード非可換幾何 / ケーラー多様体 / インスタントン / リッチ平坦 / アインシュタイン多様体 / Seiberg-Witten写像
研究実績の概要

平成31年度には"Hermitian-Einstein metrics from noncommutative U(1) instantons"というタイトルでJournal of Mathematical Physics誌に論文が掲載された。非可換ケーラー多様体の最も簡単な例である非可換実4次元ベクトル空間上で定義されたゲージ理論に着目し、特にU(1)ゲージ理論とエルミート多様体のリッチ平坦な計量の関係を考察した。実4次元ベクトル空間は複素2次元ベクトル空間と同型であり複素構造が入ることは自明であるが、その複素構造から導出されるケーラー形式が閉になるためケーラー構造・ポアソン構造を持つ。またゲージ理論とは残り3つの力を記述する理論であり、素粒子実験などでも用いられているほかトポロジーや可積分系との意外な関係もある。その中でも我々が扱ったU(1)ゲージ理論は電磁気学とほぼ同じものであり身近な対象と言える。Yangらによって、非可換U(1)ゲージ理論のインスタントンと、江口‐ハンソン計量やケーラー計量の関係についての議論はすでにあり、それはSeiberg-Witten変換と呼ばれる可換な空間上のゲージ理論と非可換空間上のゲージ理論の対応関係に新しい解釈を与えるものであった。ただ、それらの関係は明確に断片的な例示と、物理的な直観のもとでの議論であったため、数学的に厳密に何が言えるのか不明であった。そこで、筆者らはYangによる非可換U(1)ゲージ接続と計量の対応を用いると、非可換U(1)インスタントンがエルミート多様体のリッチ平坦な計量を構成できることを示した。また、その具体例を実際に多数構成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ケーラー多様体の変形量子化とその上のゲージ理論の解明を目的とした研究であるが、現在までに様々なことが判明した。局所対称性がある場合や、変形量子化の範囲を超えてFock表現での構成などである。またそれらの上での場の理論、特にゲージ理論についての構成は30年度までの目標だったので、概ね達成されているといえる。ゲージ理論のソリトン解やその性質の解明は2019年度以降のテーマであるが、これに関しては当初の予想とは異なる進展があった。というのは、非可換空間上のゲージ理論のソリトンであるインスタントンに関して、可換なエルミート多様体のリッチ平坦計量との対応が示された。これは予想していなかった成果であった。
一方で、計画開始当時では予想されていなかった問題点もある。当初の計画では非可換多様体上の場の理論や、その量子化のひな型としての位相的場の量子論への拡張を視野に入れていた。しかし、そもそも非可換多様体における計量の取り扱いに関して、何が良い指導原理となりうるかについて、考察が不十分であり、やみくもに位相的場の量子論への
拡張を行うことが必ずしも有意義ではないと考えている。そのため、変形量子化に立脚するという立場をいったん捨て、量子化の概念をより高い次元から俯瞰すべく、より一般的な立場からの非可換幾何の再定義についての研究を進めている。

今後の研究の推進方策

今年度は本プロジェクトの最終年度にあたるため、当初の計画では、これまでの研究内容を包括する内容で、様々な国際会議の機会を捉えて研究発表を行い広く結果の周知をすすめる計画であった。しかし、新型コロナウィルスの世界的な流行の影響で、多くの国際会議への出席は断念せざるを得ない状況である。また、共同研究者との議論についても、対面での議論ができる状況にいつ戻るのかもわからない状況であり、先行きが極めて不透明な状況にある。従って、状況の変化に合わせて柔軟に計画や手法を変化させていく予定ではあるが、当面は個別の研究を進めながら、オンラインでのセミナーなどを開催しながら、当面の研究課題である、量子化の概念をより高い次元から俯瞰しより一般的な立場からの非可換幾何の再定義する研究について、進めていこうと考えている。

次年度使用額が生じた理由

弘前大学から佐藤松夫先生を東京理科大にお呼びして、集中講義とセミナーを行っていただく予定であった。最初は10月12日から3日間お呼びする予定であったが、台風19号の影響で関東全域の交通機関が計画運休となり、中止となった。その後、改めて3月19日から3日間の予定に変更してお呼びする予定であったが、これも新型コロナウィルスの影響で延期され、令和2年度に順延されているため、予算計画がずれている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Sogang University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Sogang University
  • [雑誌論文] $Sp(4; \mathbb{R})$ squeezing for Bloch four-hyperboloid via the non-compact Hopf map2020

    • 著者名/発表者名
      Hasebe Kazuki
    • 雑誌名

      Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical

      巻: 53 ページ: 055303~055303

    • DOI

      doi:10.1088/1751-8121/ab3cda

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hermitian-Einstein metrics from noncommutative U(1) instantons2019

    • 著者名/発表者名
      Hara Kentaro、Sako Akifumi、Yang Hyun Seok
    • 雑誌名

      Journal of Mathematical Physics

      巻: 60 ページ: 092501~092501

    • DOI

      https://doi.org/10.1063/1.5063528

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Phi^3 matrix model and its exact solution2020

    • 著者名/発表者名
      Akifumi Sako
    • 学会等名
      4th Bangkok workshop on Discrete Geometry and Statics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] A Generalization of the Quantization of Poisson Manifolds2019

    • 著者名/発表者名
      Jumpei Gohara, Yuji Hirota, Akifumi Sako
    • 学会等名
      XXIth International Conference on Geometry, Integrability and Quantization
    • 国際学会
  • [学会発表] A Generalization of the Quantization of Poisson Manifolds2019

    • 著者名/発表者名
      Jumpei Gohara, Yuji Hirota, Akifumi Sako
    • 学会等名
      The XXVIth International Conference on Integrable Systems and Quantum symmetries (ISQS-26)
    • 国際学会
  • [学会発表] 幾何学としての量子化の一般化2019

    • 著者名/発表者名
      郷原惇平、佐古彰史
    • 学会等名
      離散的手法による場と時空のダイナミクス2019
  • [学会発表] 量子化の一般化のような話題2019

    • 著者名/発表者名
      郷原惇平、佐古彰史、廣田祐士
    • 学会等名
      科学基礎論夏のセミナー2019

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公開日: 2021-01-27  

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