研究実績の概要 |
2020年度では,量子化(非可換幾何)の一般化として圏論的な方法を用いたものを提案した. 固定されたポアソン代数に対して量子化の圏を,古典極限の構造を備えたR-加群の圏の部分圏として,定義した. 次に,その一般化された量子化の圏として,行列正則化,厳密な意味での変形量子化, 前量子化,ポアソン包絡代数を含むものをそれぞれ構成した. さらに,ある条件のもとでは,厳密な意味での変形量子化を含む量子化圏,前量子化を含む量子化圏,行列正則化を含む量子化圏が圏同値になることを示した. 一方で,ポアソン包絡代数を含む量子化圏は,それらの量子化圏とは圏同値ではないことも示された.この研究内容はJournal of Mathematical Physics vol.61, 073506 (2020) 073506-1-19に掲載されている. 研究期間を通しての研究成果についても列挙する. ●一般の非可換ケーラー多様体で,局所的にFock表現を構成し,変形量子化に翻訳する辞書を作成した.実際に様々な具体例でFock表現を与えた.その貼り合わせについてあきらかにした.●局所対称なケーラー多様体に対して,漸化式で変形量子化を構成する方法を与えた.特に複素射影空間,任意の2次元曲面のスター積を具体的に与えた.●2,4,6次元非可換ユークリッド上Φ^3場の量子論に対応する行列模型を強非可換極限で完全に解くことに成功した.すなわち任意のn点関数を具体的に書き下した.●サイバーグ・ウィッテン対応の新解釈としてのゲージ重力対応の数学的な定式化として非可換ユークリッド空間上のU(1)ゲージ理論のインスタントン解がエルミート多様体のアインシュタイン計量に変換できることを示した.また,具体例を作る公式を与えた.
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