研究課題/領域番号 |
16K05140
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石川 昌治 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10361784)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低次元トポロジー / 接触構造 / 多面体 |
研究実績の概要 |
低次元トポロジーの視点からの研究として,3次元多様体のフロースパインと接触構造に関する研究を行った.安定写像はその Stein factorization として得られる多面体を shadow とみなすことで,多面体の構造と密接に関係している.今回の研究は3次元多様体内の多面体であるスパインと接触構造との関係を調べることで,安定写像との関連を模索するものである.研究の方針として,半田伸氏との共同研究として,接触多様体の Reeb ベクトル場をフローとするフロースパインを考え,フロースパイン上に現れる特性葉層の研究を行った.ストークスの定理からくる条件を精査することで,接触形式を生むフロースパイン上の1形式の存在定理を証明し,さらに特性葉層とスパインの特異集合との接点について,接点が存在するための十分条件を与えた.アバロニやポアンカレホモロジー球面といった例の場合には接点が必ず存在し,接点を持たない特性葉層をもつフロースパインの例は今のところ見つけられていない. また,古宇田悠哉氏と直江央寛氏との共同研究で,フロースパインに対する接触構造の具体的構成などについて研究を進めた.この研究は次年度も引き続き進める予定である. 無限遠の特異点の研究については,Pham Tien Son氏やNguyen Tat Thang氏と有理関数の写像の無限遠の特異点や混合多項式写像の無限遠の特異点についての議論を進めた.特に有理関数の場合は,ベクトル空間内の孤立特異点にある程度の条件を課すと,多項式写像のときと同様に考察を進められる可能性があることを確認した.この研究についても,次年度も引き続き進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フロースパイン上の特性葉層の現れ方,スパインの頂点近傍と接触構造の関係,3次元多様体上の接触構造をどのように書き下すかなど,1つ1つ丁寧に考察し,対応の骨格を作ることに成功した.特性葉層については論文を執筆中であり,接触構造については証明を書き下しながら精査しているところである.研究の規模と,フロースパインの接触構造の関係については白紙状態から研究をスタートしている点を考えると,この1年で研究が大きく進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
3次元多様体のフロースパインと接触構造の関係について,これまでで構築した枠組みで,対応の諸定理の証明を与える.また,具体例の考察を進める.フロースパイン上の特性葉層の研究は,証明のアイデアと具体例の構成において役に立つ.ただし,フロースパインという平面的な対象と,接触構造という3次元的な対象の差は大きく,微分形式を慎重に構成していく必要がある.この2つの次元による挙動の差を精密に解析することができれば,特性葉層から接触構造を把握することが可能となり,より詳細な研究を進めることが可能となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)雇用する予定だった研究支援者が雇用できなかったため、その分を次年度に利用することにした。 (使用計画)フロースパインの研究が大きく進展したので、その研究に重点をおき、研究打ち合わせのために東北大学および広島大学を定期的に訪問する予定である。また、9月にベトナムのニャチャンで開催される日本フランスベトナム特異点シンポジウムを機に、ベトナムの共同研究者らとの交流を進める予定である。
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