研究課題/領域番号 |
16K05144
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
境 圭一 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (20466824)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 幾何学的トポロジー / 代数的トポロジー / 埋め込みの空間 / 分類空間 / 配置空間積分 / ジェネリック平面曲線 |
研究実績の概要 |
(1) 3次元ユークリッド空間内の1次元 long knot のなす空間 K は、連結和により位相モノイドをなす。K は群的でない、つまり0次ホモトピー群が群とならない。群完備化 ΩBK は群的であるため、こちらのほうがホモトピー論的には扱いやすく、しかも元々の K に近い性質を持っている。 平成28年度は、森谷駿二氏(大阪府立大学)との共同研究で、K の分類空間 BK は Jacob Mostovoy が2002年に導入した"short rope"の空間と弱ホモトピー同値であることを証明した。これにより ΩBK はshort ropeの空間のループ空間とみなせることになり、ΩBK をより幾何学的な立場から調べられるようになった。この結果をまとめた論文はウェブ上で公開済みで、現在は専門誌へ投稿準備中である。 (2) ジェネリック平面曲線の Arnold 不変量が"strange sum"に関してどのように振る舞うかについては、Arnold 自身や mendes de Jesus-Romero Fuster らにより調べられていた。平成28年度の研究では、杉山龍太郎氏(信州大学)と共同で、ジェネリック平面曲線の連結和を一般化された形で定式化し、その和に関する Arnold 不変量の振る舞いを決定した。この成果をまとめた論文はウェブ上で公開し、専門誌に投稿した。これは研究計画にはなかった内容だが、Arnold 不変量と埋め込みの不変量には深い関係があることが知られており、今後の研究においても重要な意味を持つと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元ユークリッド空間内の1次元 long knot の空間 K について、その分類空間が short rope の空間である、という Mostovoy の予想の解決が、想定していたより早く完成した。この成果を足掛かりとして、結び目の有限型不変量についての理解が深まることが期待される。この成果、手法が一般の次元の long embedding の空間についてどのような応用を持つか、という点が今後の課題となる。 ジェネリック平面曲線の和に関する Arnold 不変量の公式に関する成果は当初は想定していなかったものである。平面曲線と結び目の関係は以前から知られているところであり、応用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
結び目の有限型不変量の幾何学的な背景を明らかにするのが本研究の目的である。平成28年度に得た、3次元ユークリッド空間内の1次元 long knot の空間の分類空間と short rope の空間の関係により、short rope の空間の1次コホモロジー類として有限型不変量を特徴付けよ、という問題が考えられる。そのため、short rope の空間における配置空間積分の手法を確立したい。 これに関連して、配置空間積分による long embedding の空間のコホモロジー群の研究を、特に1次元の埋め込みの場合に進めたい。具体的には、組みひもを閉じる操作により、配置空間のループ空間と関連付ける手法を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「第63回トポロジーシンポジウム」が例年と異なり大学の講義期間に開催されるなど、大学業務との兼ね合いで参加を見送った会議があり、旅費の使用が想定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
Pisa大学で開催される国際研究集会"Arrangements and beyond"や、第7回東アジア代数トポロジー国際会議(Indian Institute of Science Education and Research, Mohali)などの国際会議に積極的に参加する予定であり、次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて、この経費に使用する予定である。
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