研究課題/領域番号 |
16K05145
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
田中 利史 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (60396851)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結び目 / 曲面 / リボン結び目 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はリボン結び目の特徴づけ及び分類を行うことである。1984年の論文においてMenascoは交代絡み目の研究において,その外部の曲面を調べるための有効な手法を導入した。この手法は,これまで結び目理論におけるいくつかの重要な問題の解決に用いられている。この手法の特徴は結び目の図式から,その結び目の外部の曲面の性質を考察できる点である。したがって曲面を直接扱うため,他の研究手法と比べ,結び目のより詳細な情報を導くことが予想される。そのため,この手法をリボン結び目の研究に用いることは,大きな成果が見込まれ,また意義があると考える。 当該年度では,研究課題であるリボン結び目の補空間の曲面を用いたリボン結び目の研究において,リボン結び目の例である結び目の対称和について考察を行った。対称和は結び目の図式の形状を用いて定義されるため,一般に上記のMenascoの手法を用いて交代結び目と同様に特徴づけられると期待できる。 その結果として,対称和が合成結び目である場合の補空間の分解球面の位置を調べることで,ある条件の下で対称和の特徴づけを行うことができた。具体的には,合成対称和を構成するタングルが1個の場合に,それが2つの対称和の連結和であるかまたは,ある結び目とその鏡像からなる対称和の成分を含むことを示した。その帰結として,合成対称和で最小ねじれ数が2である対称和結び目の例を初めて示すことができた。 関連した研究として,結び目の結び目解消数と領域結び目解消数に関する研究を行った。結果としてゲーリッツ不変量から定まる数量を用いて,それぞれの不変量に関する評価式を得ることができた。対称和の例である金信結び目の結び目解消数と領域結び目解消数はそれぞれ2,3以下であることが分かるが,この評価式を用いることにより,それらが2,3に一致するための十分条件を与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はリボン結び目の例として知られている結び目の対称和の特徴づけを行っている。対称和が合成結び目の場合に,その補空間の分解球面を,切り貼りの議論及び概要で述べたMenascoの手法を用いて調べることにより,最小ねじれ数が1の対称和に対してその特徴づけることができた。特に,合成対称和で最小ねじれ数が2である例を多数構成することができた。その内容について8月に開催された研究集会「拡大KOOKセミナー2016」で研究発表を行うことができた。 一方で,Menascoの手法を対称和に適用する場合,そこで扱う図形の複雑さから一般には特徴づけることは難しい。しかし,その手法を少し修正することで空間グラフを用いて研究するとこができることが分かってきた。 また,結び目のゲーリッツ不変量の研究を行い,結び目の結び目解消数と領域結び目解消数の評価を行うことができた。その結果として対称和の例である金信結び目の結び目解消数と領域結び目解消数がそれぞれ2,3であるための十分条件を与えることが出来,[Topology and its Applications 219 (2017)]において学術論文として発表することができた。 以上により,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,リボン結び目が合成結び目の場合の特徴づけを行う。特に結び目の対称和が合成結び目の場合,その補空間の分解球面が存在するため,その球面と対称和の対称球面との交わりを考えることで,空間グラフが得られる。このグラフを詳しく調べて特徴づけることにより研究を推進していく。その中で研究計画で述べたMenascoの手法のアイデアを一部に用いることで,実際にグラフの条件を得ることができるため,さらなる研究の進展を期待している。 また,2年目以降は研究計画で述べたように,リボン結び目の補空間の一般の曲面に対してもMenascoの手法またはその一般化を用いて研究を行う予定である。
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