本研究の目的は,3次元空間における結び目の補空間に存在する曲面の位相的な特徴を調べることで,リボン結び目の特徴づけ及び分類を行うことである。メナスコは1980年代の論文において,結び目補空間の曲面を調べるための有効な手法を発表した。この手法を用いると曲面同士の交叉に現れる曲線を調べることで,結び目の図式から直接,曲面の性質を考察可能である。この手法をリボン結び目の研究に適用できるように修正することで,研究成果を上げられると考えた。 当該年度は前年度に引き続いて,研究課題であるリボン結び目の補空間の曲面を用いた研究を行った。リボン結び目の例である対称和は,鏡映対称な位置にある2つの結び目を,対称平面上でつなぐことで得られる結び目である。この対称性の条件を考慮することで,補空間の曲面の関係を調べ,対称和の研究をさらに進めた。 その結果として,最小ねじれ数が1である対称和に対して,それがサテライト結び目の場合に,その補空間に互いに平行でない圧縮不能トーラスが少なくとも2つ存在することが分かった。またその帰結として,パターン絡み目が双曲的でないことが分かった。関連した研究として,2成分の絡み目である対称和の研究を行った。対称和絡み目に対して,最小ねじれ数を定義し,各成分の最小ねじれ数との間の不等式を与えた。さらに,「その不等式の等号が常に成り立つか」という問題を考え,その問題に対していくつかの反例を与えた。
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