研究課題/領域番号 |
16K05147
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 進 神戸大学, 理学研究科, 教授 (90345009)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 曲面結び目 / 射影図 / ガウス図 / ケーブル結び目 / 仮想結び目 / ねじれ多項式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、古典結び目と曲面結び目の類似性と相違性に着目しながら曲面結び目の性質を解明することである。本年度の実施計画は、曲面結び目の射影図に対するガウス図の導入であった。以下本年度の研究実績について3つに分けて概要を述べる。 (1)曲面結び目の射影図のガウス図の定義と性質:曲面結び目の射影図は2重点集合Gによって特徴付けられる。2重点集合Gは円周および線分の3次元ユークリッド空間へのはめ込みで、横断的3重点をもつものとみなせる。古典結び目の射影図で用いられるガウス図の考え方を曲面結び目理論に導入することで、Gを円周および線分上に三叉コードをもつガウス図として記述することができた。またGの逆像である2階層集合(閉曲面上での円周のはめ込み)のガウス図との対応を明らかにした。特に球面結び目の場合、2階層集合が平面曲線になることを利用して射影図の2重点集合Gがもつさまざまな性質を発見した。 (2)リボン曲面結び目のケーブル:古典結び目Kと自然数nに対しn-ケーブルK(n)が定義される。同様に曲面結び目Fのn-ケーブルをF(n)とすると、特にFがリボン型である場合F(n)もまたリボン型であるが、F(n)のリボン表示はF自身のリボン表示から「リボン交差のn重化」によって得られることを示した。さらにこれがFの仮想結び目表示に対する「交点のn重化」に対応することを明らかにした。 (3)仮想結び目・絡み目の貝変形とねじれ多項式:結び目理論において不変量と局所変形の対応の解明は代数と幾何の両面をつなぐ重要な研究課題である。この研究では仮想結び目の基本的な不変量であるねじれ多項式に対応する局所変形(貝変形)を発見することに成功し、さらに2成分仮想絡み目に対する貝変形が絡み目のどのような不変量に対応するかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
曲面結び目の射影図における2重点集合を記述する三叉コード付きガウス図式と、その逆像である2階層集合のガウス図式との対応を明らかにできただけでなく、球面結び目の場合に平面曲線の性質を利用することで2重点集合の性質を発見し、さらにこれを3重点を4つもつ射影図に応用することで、当初の計画では想定していなかったブランチ点をもたない場合の射影図の特徴付けまで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果をもとに、さらに球面結び目の射影図で3重点を4つとブランチ点をもつものに対して考察を行うことで、3重点数が4である球面結び目の最終的な特徴付けの解決につなげたい。 また、貝変形による3成分以上の仮想絡み目の分類についても仮想絡み目の新しい不変量を発見することで解決につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学において予定外の仕事があり当初の計画通りに出張することができなかったため、次年度に繰り越す必要が生じた。本年度は海外出張を計画している。
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