研究課題/領域番号 |
16K05149
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺垣内 政一 広島大学, 教育学研究科, 教授 (80236984)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不変順序 / 共役ねじれ元 |
研究実績の概要 |
3次元多様体の基本群の多くは,両側不変順序を許容しない.順序群の研究において,両側不変順序を許容しない群は,共役ねじれ元をもつと予想されていた.残念ながらこの予想に対しては,1970年代に反例が見つかったが,それらは3次元多様体の基本群ではない.いわば,3次元多様体の基本群のような素性の良い群については,上記の予想は成立すると予想する. 本年度の研究では,この予想を代表的な3次元多様体の族であるザイフェルト多様体と可解多様体に対して肯定的に解決した.3次元多様体の許容する幾何構造は8種類しかないことが知られているが,これにより7つの幾何構造に対して予想が解決されたことになる.残る双曲多様体の場合がもっとも難しいことはいうまでもないのだが,8の字結び目の巡回分岐被覆空間すべてや,レーブレス葉層構造を許容しないことで知られる双曲3次元多様体の無限族など,双曲3次元多様体のこれら無限列に対しても予想の肯定的確認を行うことができた.この結果は,日本大学の茂手木公彦氏との共著論文として執筆し,すでに国際学術雑誌に受理されている.また,イギリスのケンブリッジ大学で開催された3次元多様体に関する国際ワークショップにおいて,研究代表者が成果発表を行った. また,結び目外部空間のスロープの定める正規部分群について,いつそれらが一致するか,それらの交わりの分析,包含関係の分析を行った.特に,そのような正規部分群がいつ一致するのかといういわゆるマグナス問題に対して,完全解決を得ることができた.この成果については現在,論文にまとめているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の早い段階で成果が得られたため,その結果を論文にまとめ,国際学術雑誌に受理されている.また,ケンブリッジ大学で開催された国際ワークショップにおいて成果発表をするに至った.さらに次年度以降に向けて,着々と成果が蓄積されつつあることから,順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
結び目外部空間のスロープの定める正規部分群を調べる必要性は,研究計画に述べた共役ねじれ元の継承あるいは生成という観点から生じている.上述のように,スロープの定める正規部分群の構造分析については一応の結論を得たので,本来の目的である共役ねじれ元の研究に移行する.
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