研究課題/領域番号 |
16K05150
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
逸見 豊 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (70181477)
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研究分担者 |
山口 俊博 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90346700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有限位相空間 / 順序複体 / 有限位相空間の圏の拡張 / 極小有限位相空間 |
研究実績の概要 |
有限位相空間($T_0$分離公理を満たすとする)に対し,その順序複体を考えることにより,有限位相空間と連続写像の圏から,有限単体的複体と単体写像の圏への関手が与えられる.この関手は充満であるが忠実でないことが知られている.さらにこの関手はホモトピックな写像を強ホモトピックな単体写像に写し,よってホモトピー圏の間の関手を定義するが,この関手も充満であるが忠実でないことが知られている. 研究代表者はこれまでに,有限位相空間の間の連続写像の定義を弱めることにより,有限位相空間の圏を拡張し,その圏からも上記の関手が定義され,さらにこの拡張された圏からは,関手が充満かつ忠実になることを示している.また,この関手はホモトピー圏の間の忠実かつ充満な関手を定義することも示している.本研究課題の第一のテーマは,この関手を用いた有限位相空間に関する研究である. この課題において,本年度得られた成果は極小有限位相空間に関するものである.すなわち,極小空間の間のホモトピー同値写像は同相写像であることが知られているが,それが拡張された圏においても成り立つということを示した.さらに,極小空間の間の2つのホモトピー同値写像がホモトピックならば,それらは一致することも示した.これにより,自己ホモトピー同値写像のホモトピー類全体から成る群は,自己同相写像群と一致し.よって,極小空間においては,自己同相写像群はホモトピー理論の枠内での研究対象となることが分かった.一方,任意の有限空間は,極小空間を変位レトラクトとして持つことが知られており.この極小空間は核と呼ばれているが,これにより,任意の有限空間の自己ホモトピー同値写像のホモトピー類全体から成る群は,その核の自己同相写像群により決定されることが分かった.結果は論文として発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の申請時には分担者が1名加わる予定であったが,研究開始時にその分担者が急死したため,申請者が1名で研究を開始することになった.そのため予定より研究がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は2名でスタートする予定であった研究が1名で行わなくてはならなくなったため,研究が予定より遅れているが,2年目からは分担者を新たに加え2名により研究を行う予定である.これにより遅れを取り戻したいと考えている. 具体的には,これまでの研究と合わせて,グラフホモトピーとの関連を明確にすることを考えている.特にBarcelo等により構成されたグラフのA群が有限位相空間とグラフの対応の観点から有限位相空間のホモトピー群とどのように関連するかを明確にしたい.また,ホップ空間の理論,とりわけ高位ホモトピーに関する様々な概念を有限位相空間の圏の中で記述することを考える.さらには,離散Morse理論との関連も調べていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2名でスタートする予定であった研究が1名で行わなくてはならなくなったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
すでに書いたように2年目からは分担者を新たに加え2名により研究を行う予定であり,今後はある程度計画通りに使用する予定である.
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