研究課題/領域番号 |
16K05152
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
枡田 幹也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00143371)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トーリック幾何 / コホモロジー剛性問題 / Hessenberg variety / 凸多面体 / 双曲多様体 / トーリックトポロジー |
研究実績の概要 |
次の3つの結果を得た. (1)トーリック多様体のコホモロジーは対応する扇の言葉で完全に記述されている.特に,捩れがなく奇数次は0である.トーリック軌道体のコホモロジーは有理係数ではトーリック多様体と同じであるが,整数係数では殆ど分かっていない.本研究では,コホモロジー次数が低いときと軌道体の次元に近いときにコホモロジーを扇の言葉で記述し,捩れが存在しないための必要条件を与えた(鍬田英也-曽昊智との共同研究) (2)Pogorelov多面体とよばれる3次元単純凸多面体は,面角が直角になるように双曲空間に実現でき,そのコピーを8個面で貼り合わせると3次元双曲閉多様体が得られる.これをLoebell型の双曲多様体という.本研究では,Loebell型の3次元双曲閉多様体は,Z/2係数のコホモロジー環で区別できることを示した.したがって,Lobell型の3次元双曲閉多様体では,Z/2係数のコホモロジー環が基本群を決めてしまう.手法は,単純多面体から定まるmoment-angle多様体を用いる.Moment-angle多様体はトーリックトポロジーの研究において最も重要なものの1つで,今回の結果はトーリックトポロジーの双曲幾何への際立った応用と思う(Buchstaber-Erokhovets-Panov-Parkとの共同研究). (3)Regular nipotent Hessenberg varietyのコホモロジー環が,ルート系のイデアルに付随した超平面配置から定まるある環と同型であることを示した.このことより,Dale Petersonにより予言されていた事実,Sommers-Tymoczko予想を解決した.また,regular nilpotent Hessenberg多様体のコホモロジー環の明示的な記述を与えた(阿部拓郎-堀口達也-村井聡-佐藤敬志との共同研究).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
27年度に阿部拓-原田芽ぐみ-堀口達也との共同研究において,A型の regular nilpotent Hessenberg variety のコホモロジー環を決定したが,この結果が超平面配置と関連しているという驚くべき事実を,阿部拓郎-堀口達也-村井聡-佐藤敬志らと発見し,それにより,Dale Peterson によって予言されていた事実の証明を与え,さらに Sommers-Tymoczkoの予想に肯定的解決を与えた.この超平面配置との関連は全く予想だにしなかったことであった.またこれにより,D,E,F型以外の regular nilpotent Hessenberg 多様体のコホモロジー環の明示的な記述を得た.
Lobell型の3次元双曲閉多様体が我々が研究していたトーリックトポロジーの範疇にあり,Z/2係数のコホモロジー環で区別できるという事実の発見も予想外であった.
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今後の研究の推進方策 |
Regular nilpotent Hessenberg variety のコホモロジー環の全貌が見えてきたが,regular semisimple Hessenberg variety のコホモロジー環は,未知の部分が多い.今後は,阿部拓,堀口達也,佐藤敬志らと協力して,この解明に力を注ぎたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残なので,次年度の研究費と合わせて有効に使おうと思った.
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次年度使用額の使用計画 |
本の購入の一部に充てる.
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