研究実績の概要 |
平成29年度に引き続き, 研究代表者が発見した曲面の写像類群における線型性の視覚化の観点から生じる問題のうち, 主に曲線加群の基礎とその応用, ならびに Johnson filtration と幾何的交叉の関係について, 位相幾何的に研究した. 詳細は以下の通り. 1. 曲線加群の基礎理論に関して: これまでに知られている唯一のスケイン型曲線加群である, Luoの表現の代数的性質を引き続き検討した. 特にその有限次元性の起源と, 或る種の加群のネーター性が関連するかも知れないとの着想に基づき, Church-Farb等によるFI加群の理論との親和性を具体的に検討するための, 予備的考察を行った. 2. Johnson filtration と幾何的交叉の関係をさらに明らかにするべく平成29年度までに得られた, 基本群の冪零商への作用と曲線の冪零商における共役類との関係を, ある程度まで整理した. また, 関連して, Kawazumi-Kunoによるデーンツイストの対数理論に始まる, 関連する基礎理論の(再)検討を, 引き続き行った. 3. その他, 曲面の写像類群について, 量子射影表現の性質, 低次元の複素線型表現の分類など, 関連する位相幾何的問題を引き続き検討した. 4. 特に, 平成29年度までに基本的には完了させた, 種数gのコンパクト有向曲面の写像類群の2g+1次元複素線型表現の, 共役を法とする分類を更に検討した. また, 完了させた部分についてはその概要を学会にて発表した.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初の計画では本研究課題の最終年度となる筈であったが, 平成28年度より確保していた海外研究者との研究打ち合わせを行うための旅費のみ, 今年度も諸般の事情により都合がつかず執行することができなかったものである. 共通の研究集会への参加, あるいは個別の日程調節を図り, 平成31年度中に当該海外研究者との研究打ち合わせを行う計画である.
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