研究期間の最終年度に得た成果は,研究費の繰り越しを行い,自由群の自己同型群のAndreadakis予想に関して大きな成果を得たJaques Darne氏をフランスから招聘し,研究打ち合わせや東京大学で行われたJohnson準同型に関する研究集会での講演を通じて,最新の研究成果に関する専門的知識の提供を受けたことである.これにより,半直積分解を持つような部分群に関してはAndreadakis予想が肯定的に解決されることが分かった.これは研究代表者が行ってきた一連の研究をより大きく一般化するもので,Andreadakis予想の肯定的解決に向けて大きな知見が得られた.さらに,彼の最新の結果により,pure braid群のAndreadakis問題が肯定的に解決することが分かり,これにより,pure braid群のJohnson像の決定問題に大きな足がかりが得られ,今後是非取り組みたいと考えている.
本研究期間を通じて得られた成果は大きく分けて3つある.1つ目は,階数3の自由群のIA自己同型群の2次元ホモロジー群に関してGL表現論的解釈を行い,新たな既約成分を見つけたこと,並びに1次元のコホモロジー群の3重カップ積の像が自明であることが分かったことである.近年,自由群の自己同型群のコホモロジーの研究に関しては,非安定域に大きな研究の関心が集まっており,相応のインパクトがあるものと確信している.2つ目は,次数が3の場合にAndreadakis予想が肯定的に解決できたことである.Andreadakis予想は50年以上も未解決問題であり,一部分とはいえその解決に寄与できたことは大変満足している.3つ目は,自由群のIA自己同型群の,非自明なねじれ係数非安定コホモロジー類をいくつか構成できたことであり,現在,この研究を精力的に継続・進展させている最中である.
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