研究課題/領域番号 |
16K05158
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
圓山 憲子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (80147008)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 位相不変量 / 3次元多様体 / キャッソン不変量 / デデキント和 / ライデマイスター不変量 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有理ホモロジー3球面へのCWL(Casson-Walker-Lescop)不変量について、(1)申請者のこれまでのCWL不変量に関する研究を継続的に深化させ、(2)Reidemeister-Turaev torsion と組み合わせて適用することの有効性をさらに検証し、(3)Seiberg-Witten(サイバーグ・ウィッテン)不変量や Knot Flore(フロア)ホモロジー群等の他の不変量との関係を視野に入れた具体的な研究を加え、CWL不変量が捉える幾何学的現象を記述していくことである。 (1)については、平成27年度末から平成28年度当初に、申請時の予備的研究のうち、CWL不変量の小数部分の研究を深め、ホモロジーレンズ空間の1次元ホモロジー群上に定義される絡み形式を完全に分類するための不変量一式を与えるという新しい結果を得て、平成28年4月に学術雑誌Topology and its applicationに掲載された。また、同じく予備的研究として挙げた「有理ホモロジー3球面の分布」という概念、即ち有理ホモロジー3球面に、その1次元ホモロジー群の位数とCWL不変量の値を組にして平面上にプロットし、結び目の改変、同境関係など様々な幾何学的状況を平面上で視覚的に表現するアイディアの応用では、平成28年度に不変量の値をカメラのズームインで絞り込んでいくような不等式のシステムを発見し、Rasmussenによるレンズ空間のウォカー不変量を用いた判定法の簡明な別証明を与えることができ、平成29年度始めに学術雑誌Knot theory and its ramificationに掲載された。これは(3)の研究にも将来的に関係を持つと推察している。(2)については、門上晃久(金沢大学)と酒井健(日本大学)との共同研究の3本目となる共著が平成29年度末にTopology and its Applicationに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時に列挙したCWL不変量に関する予備的研究から、分布の論文”A distribution of rational homology 3-spherescaptured by the CWL invariant”が学術雑誌に掲載された。CWL不変量の値の絶対値の上限の存在は、有理ホモロジー同境群の構造とも関係おり、同境群の中で零になるレンズ空間の上限の存在を既に証明し、平成28年に投稿したが、査読に1年近く時間を要し、結果採用されなかった。 また、2成分絡み輪の手術で得られる有理ホモロジー球面のCWL不変量公式(2013年)の応用に関する論文執筆を進めていたが、投稿に至っていない。 老親が平成29年6月に骨折し、寝たきりとなり親の自宅での介護のため、また、11月に研究代表者本人の眼の異常で、眼圧を下げる治療が必要となったが、処方された治療薬が合わず、ひと月激しい眩暈やふらつきが続くなどの為、十分なエフォートを達成できなかった。これらのことから、研究会開催や国内外の学会活動も不十分であった。 以上により、進展について記載の通りの評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、全体的な遅延をできるだけ取り戻すことに注力したい。研究目的(1)に関しては、2成分絡み輪の手術で得られる有理ホモロジー3球面への応用について、平成28年度に得られた結果を活かし論文の仕上げを進める。また、投稿で不受理となった有理同境群に関連する研究は、結果の導出方法を再検討し、全体を刈り込んで書き直しを行う。 平成29年度の推進方策等に記したもののうち、平成28年度に導入したMathematicaを利用して、結び目の手術で得られるレンズ空間のCWL不変量を残りのクラスについて数値実験を行い、一般公式を導出する。 研究目的(2)に関しては、夏季に共同研究者と、CWL不変量とRT-torsion不変量を組み合わせて適用する幾何学的設定を中心に、集中して議論する計画する。 研究目的(3)に関しては、申請時計画にある、SW不変量、RT-torsion、CWL不変量の間に成立する関係式の証明の精査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
遅延の事由に述べた通りのことから、平成29年度使用計画に挙げた国内研究集会への複数回の出席と、共同研究者を中心とした関係分野の研究者と夏季の研究会開催が実施できなかった。また、平成29年度は外国旅費を予算に組まなかったが、授業期間との調整が可能な外国での研究集会への出席を計画することができなかった。全体として研究時間が不十分で、研究資料の収集も滞った。 (使用計画) 平成30年度は、可能な限り国内外で開催される研究集会等へ出席し、研究交流を進める。研究資料の収集に努めるとともに、遅延している論文執筆を進める。
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