研究実績の概要 |
前年度に10交点以下の素な結び目に対して、結び目群間の全射準同型の存在もしくは非存在についてを決定することが出来たていた。今年度はさらにおおよそすべての11交点以下の素な結び目について、同様に結び目群間の全射準同型の存在と非存在を決定した。ただし2ペアについてはまだ決定に至っていない。 ほとんどのペアについての全射準同型の非存在を証明するには結び目群から対称群への準同型を調べ、対称群の標準的な表現を合成させて得られるねじれアレキサンダー多項式を用いた。実際、この判定条件を適用するのに7次までの対称群で調べることが出来た。しかしそれでは決定できないペアが10ペアあり、それらについてはさらに8次対称群や9次対称群を考えた。このとき、対称群の全ての部分群も利用した。あるペアでは7次対称群まででは全射準同型の非存在を証明できないが、8次対称群の位数336のある部分群で全射準同型の非存在を証明できたものもある。この部分群は7次までの対称群の部分群とはなっていない。 これらの方法でも決定できないものについては有限単純群への準同型とその表現を合成し、それに付随するねじれアレキサンダー多項式を計算した。単純群の表現は忠実な表現となるため、表現で情報を失うことがないため、この判定方法が有用な可能性が高いと考えた。位数の小さい有限単純群から調べ、順に位数の大きな有限単純群について考察し、位数95,040の群で全射準同型の非存在を証明できたものもある。
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