研究実績の概要 |
1980年代にDennis Johnsonにより提唱された3次元多様体のSL(2;C)-表現のReidemeister torsion、およびそれらを零点にもつtorsion多項式について研究を続けている。前年度までにBrieskornホモロジー球面の場合や8の字結び目をDehn手術して得られるホモロジー球面の場合の具体的な値を表す公式やTchebychev多項式を用いたtorsion多項式を表す公式について研究を進めてきた。 当該年度においてはそれらから引き続き以下の事柄について研究を進めた。 1。トーラス結び目や8の字結び目からスプライスと呼ばれる操作から得られるホモロジー球面の場合に、取り得るReidemeister torsionの値は有限個であることを証明した。 2。Brieskornホモロジー球面に限った場合にこれらが完全な不変量であることを証明した。 2に関しては、より具体的には以下のような主張である。(p,q,r), (p',q',r')の2つの互いに素な整数の組で与えられるBrieskornホモロジー球面に対して、もしもSL(2;C)-表現のReidemeister torsionの値の集合が一致しているならば, (p,q,r)=(p',q',r')が成立する。ここで、torsion多項式が一致をすると零点であるReidemeister torsionの値が一致をすることに注意する。この証明はBrieskornホモロジー球面の既約表現のReidemeister torsionが三角関数を用いて具体的に書き下されていることから可能となる。 加えて、Brieskornホモロジー球面や8の字結び目をDehn手術して得られるいくつかの具体例において、torsion多項式の定数項の値が本質的にSL(2;C)-Casson不変量と一致していることを確かめた。
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