Reidemeister torsionは1930年代に定義された多様体とその基本群の線型表現の組に対する位相不変量である。線型表現に依存して値は一般には変化するが、共役な表現に対して値は変わらないので、その多様体の基本群の線型表現の共役類全体に対応する指標多様体上の関数とみなすことができる。 1980年代後半にDennis Johnsonが、Casson不変量との関係、あるいは2行2列で行列式が1である行列全体であるSL(2;C)への表現の場合の公式など、様々な研究を行なった。これらが本研究の出発点である。 本年度はまずAnh Tran氏、森藤孝之氏と共同でトーラス絡み目の指標多様体の構造について研究を行なった。これは古典的によく知られているトーラス結び目の場合の結果を踏まえた一般化である。またトーラス絡み目の指標多様体の構造を調べた上で、Reidemeister torsionやtwisted Alexander多項式の振る舞いについて研究を行なった。論文はarxiv.orgで公開をしている。 また、spliceと呼ばれる2つの結び目からhomology 3球面を作る操作がある。これはそれぞれのmeridianとlongitudeを入れ替えて張り合わせるものである。このspliceで得られる多様体の指標多様体は必ず次元をもち、かつ孤立した点は存在しない。したがってこのspliceにおいてReidemeister torsionを考えた場合、値は無限個の可能性がありうる。これに関して野崎雄太氏との共同研究で、2橋結び目を含むある結び目のクラスでspliceをした場合Reidemeister torisonの値は有限個になることを証明をした。論文はこちらもarxiv.orgで公開をしている。
|