本研究の目的は結び目図式を局所的に変化させる局所変形を用いて,結び目全体の構造の解明や個々の結び結び目の位相的性質を把握することである.本研究では研究期間を通して、単純リボン融合とプレッツェル結び目の研究に注力し、成果を得た。結果として期間内に8編の論文を発表した。以下4つの主要結果について述べる。 まず、リボン融合は結び目理論において重要な類であるリボン結び目・絡み目を生成する変形で,単純リボン融合はその特殊な場合であるが、全てではないものの非常に多くのリボン結び目・絡み目を生成することができる。まず第一に、単純リボン融合による結び目のアレキサンダー多項式の変化量を求めた。これによって交点数10以下のリボン結び目について、単純リボン結び目であるか否かの判定が得られた。ここで、自明な結び目から単純リボン融合で得られる結び目を、単純リボン結び目という。第二に、可約なパラメータ列を持つプレッツェル結び目のアレキサンダー多項式も求めることができた。これにより、パラメーター1を持たない奇ストランド偶プレッツェル結び目が単純リボン結び目であるための必要十分条件が得られた。 そして第三に、交代プレッツェル結び目について、スライス・リボン予想が成り立つことを示した。スライス結び目はリボン結び目であるというスライス・リボン予想は結び目理論において大きな問題の1つである。さらに第四に、2成分プレッツェル絡み目がスライスであるならば、そのパラメータ列は本質的に可約であることを示した。
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