研究課題/領域番号 |
16K05163
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
池田 徹 近畿大学, 理工学部, 教授 (00325408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空間グラフ / 対称性 / 3次元多様体 / デーン手術 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,3次元多様体上の有限群作用の研究を経て,最終的には抽象グラフの対称性と3次元球面内の空間グラフの対称性の関係を調べることを目標としている。前年度には3次元多様体上の周期写像の研究や,空間グラフの対称性に関する研究を行った。2017年度は,これらの研究を本研究課題の最終目標に繋げることを念頭におき,以下の3点について研究を行った。 1点目は,外部空間内に対合の不動点集合となる閉曲面が存在するための空間グラフの条件に関するものである。本研究は前年度に行ったが,2017年度はその研究成果を学術論文にまとめ,査読付き論文誌への掲載によって公表した。 2点目は,3次元多様体上の向きを反転する滑らかな周期写像に対する3次元球面,2次元球面上の円周束,3次元トーラス内の手術の記述の存在に関するものである。前年度からの研究の未完成部分を補い,研究成果を学術論文にまとめた。 3点目は,空間埋め込みによる抽象グラフの対称性の実現問題に関するものである。具体的には,抽象グラフの自己同型群の有限部分群が4次直交群の部分群と同型であるとき,3次元球面上の標準的線型作用のもとで集合として不変な空間埋め込みが存在するかという問題である。先行研究のように代表的なグラフを対象とし,その構造に基づいて3次元球面内の頂点や辺の配置を工夫して空間埋め込みを構成する方法では,一般のグラフへの応用は難しい。そこで,抽象グラフの対称性の実現に有利な向き付け可能閉3次元多様体への空間埋め込みを構成し,同変デーン手術により3次元球面への空間埋め込みに変形する方法について研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,外部空間内に対合の不動点集合となる閉曲面が存在する3次元球面内の空間グラフについて,前年度の研究成果を学術論文にまとめ,査読付き論文誌に投稿したところ掲載され,公表することができた。次に,前年度に着手した3次元多様体上の向きを反転する滑らかな周期写像の手術の記述問題に関する研究を継続し,問題を解決することに成功した。研究成果は学術論文にまとめており,2018年度中の公表に向けて手続きを進めている。さらに,これらの研究をベースとして本研究課題の最終目標である空間埋め込みによる抽象グラフの対称性の実現問題の研究に着手した。基本的には本研究課題の計画段階のアイデアに基づいているが,具体的な理論を構築するにあたって,対称性のある3次元多様体を2次元多面体に沿って基本領域に分割し,それらを追跡しながら3次元多様体を変形する議論が必要であり,その方法について考察し,次年度の研究に繋がる一定の成果を得た。本年度の研究によって次のステップに移るために必要な現象を考察し,十分な知見が得られたため,本研究課題の計画通りに順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に着手した空間埋め込みによる抽象グラフの対称性の実現問題に関する研究の完成を目指す。計画段階のアイデアを踏まえつつ,基本領域への分解に基づいて3次元多様体の変形を精密に議論し問題を解決する。また,実際的な空間埋め込みの構成が見えづらいことから具体例を示すとともに,有用な応用例を検討する。これらの研究成果は,2017年度分も含め,国内外のセミナー,研究集会,シンポジウムで随時報告するとともに,学術論文にまとめ,学術雑誌へ投稿し公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は計画どおりの使用額となる予定であったが、消耗品の支出額が見込みを下回ったため,交付決定されていた金額の一部を次年度に使用することとした。 当初の支出計画は変更せず,国内外での口頭発表・研究調査に関わる研究出張や,関連分野の学外研究者の招聘,位相幾何学関係図書や消耗品の購入に,内容を充実させて使用する予定である。
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