研究課題/領域番号 |
16K05166
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
渡辺 文彦 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 総合教育学群, 教授 (20274433)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ツイストホモロジー / アーベル曲面 / テータ因子 |
研究実績の概要 |
アーベル曲面からテータ因子を2個除いた空間のツイストホモロジー類の構成では,一次独立な6個の2ホモロジー類の具体的構成が問題となる.当初の予定(以前AomotoとかSalvettiなどと唱えていたが)よりははるかに初等的な構成法となったが,複素トーラス上でのこの種のホモロジー類の構成は前例が見当たらず,また計算上の盲点や錯覚となる箇所がいくつかあり,その克服に時間を要した.構成にはまずアーベル曲面を適切な仕方で4次元超立方体に展開する.それに伴いテータ因子は8角形に展開される.超立方体の境界上に一次独立なホモロジー類が2個容易に見つかる.テータ因子は種数2のリーマン面であるので1サイクルが4個ある.各サイクルに付随して2つのテータ因子を橋渡しする円筒が4個作れ,これから自然に構成されるツイストホモロジー類が4個できる.これらの間にいくつかの線形関係式があり結局一次独立なものは1個に絞られる.一次独立な残り3個は,テータ因子で境界を縁取られた局所有限ホモロジー類のコンパクト化で得られる.この際8角形の各辺に対応して複数のホモロジー類が生じるが,線形関係式をしらみつぶしで求め3個に絞り込むことができる.以上が構成の概要である.この結果は2018年1月17日立教大学数理物理学研究センター,同年2月21日琉球大学理学部にてそれぞれ1時間講演を行い専門家からのレビューを受けた.また結果を要約したものとして「テータ因子の補集合の基本群とツイストホモロジー」というPDFの手書き文章を2月21日の琉球大学における聴講者に配布した.これはできるだけ早く活字化し一般公開予定.また2017年8月22日お茶の水女子大学における実函数論函数解析学合同シンポジウムでは2016年度までの研究結果の報告を行ないレビューを受けた.この講演内容は上記シンポジウムのレジュメとしてPDFで一般公開されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アーベル曲面からテータ因子を2個除いた空間のツイストホモロジー類の構成の研究は,前例が見当たらず,射影空間における超平面配置の研究におけるテクニックが使えないことからテクニックをすべて自前で用意しなければならなかったため,交付申請書では平成28年度までに研究を終えるところ,29年度まで時間がかかった.しかしながら,6個の一次独立なホモロジー類の構成を完了したのに加え,昨年度の段階ではテータ因子を2個除いた空間に付随するCW複体の見当さえついていなかったところ,現時点では以上の構成のおかげでテータ因子をN個除いた空間のCW複体の候補まで挙げられるようになり,テータ因子をN個除いた空間のツイストホモロジーについての手がかりを得た. 一方,交付申請書では平成29年度に予定していた,超楕円曲面上の積分については,Kumamoto J.M.(2016)で発表した論文における一般論を応用しつつ,Mumfordにおけるprime formを用い,コホモロジー基底を書くという基礎的考察の段階にあり,確定的な研究結果は平成30年度以降の予定である.以上のことから「やや遅れている」という判定になった.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書では平成29年度に予定していた,超楕円曲線上の積分については研究がやや遅れていることから,基本的方針は自らが明確にしつつ協力者の助けを借りて研究を行なう.具体的には今年度より論文指導を行う修士の学生を一人担当することになったので、リーマン面の基礎知識を修得させた後(Forster, Lectures on Riemann Surfacesを読ませている),例えば種数2や3の場合で超幾何型積分に関連するコホモロジーに関し交叉の計算などを協力して実施してもらうことを考えており,自らの研究時間の節約を図る.その節約した分を平成30年度実施予定のKummer曲面の研究に時間配分行う.Kummer曲面の研究では,アーベル曲面上特殊な配置にある16個のテータ因子に着目し,16点ブローアップおよび(-1)商により曲面を構成する.局所定数層としては16個のテータ因子に付随するものを用いる.コホモロジーの構造に興味がある.また28年度に得た基本群に関する結果,および29年度に得たツイストホモロジーの結果の論文化を急ぐ.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はほぼ予定通りの物品の調達,研究のための旅行を行なっている.この過程でより廉価な同等品や旅行商品が見いだせた結果として次年度使用額(B-A)が生じたが,金額は2000円未満であり,当該年度の実支出額(A)は当初の研究計画からかけ離れた支出金額でないと考える.残額は次年度の図書などの物品購入や研究旅費などに充当し有効に活用する.
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備考 |
上記ホームページは校内向けに作成したものであり,研究結果も校内のみで公開しており,現時点で外部公開していない.このホームページに改良を加え,できるだけ早く(この基金の助成を受けている期間内をめどに),外部公開用のホームページを立ち上げ研究成果報告を掲載する予定.
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