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2016 年度 実施状況報告書

量子スピン系の基底状態の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K05171
研究機関東京大学

研究代表者

緒方 芳子  東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80507955)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード量子スピン系 / 基底状態
研究実績の概要

量子力学において時間発展を与える演算子はハミルトニアンと呼ばれるが, 量子スピン系においては,これは自己共役な行列の列により表される.この行列の最低固有値と,のこりのスペクトルの間に(系のサイズについて)一様なギャップが開いているか否かは基底状態の性質をきめる重要な問題である.ギャップがある相は臨界的な振る舞いをしない.近年このギャップをもった系の分類が注目をあつめている.これは,二つのギャップを持つハミルトニアンを,ギャップのあるハミルトニアンの連続なpathでつなぐことが出来るかという問題である.もしつなぐことが出来れば,これらのハミルトニアンは臨界現象を経ずにつながる,という意味で,本質的に同じものといえる.一般にスペクトルギャップを示すのは非常に難しい問題であり,完全に一般な量子スピン系についてこの問題を考えることは現在の技術では不可能である.しかし一次元系についてはfinitely correlated stateと呼ばれる状態を基底状態としてもつサブクラスは,ある良い条件のもとスペクトルギャップを持つということが知られている.これを含むハミルトニアンのクラスで, スペクトルギャップを含むものを導入した.さらに,この拡張されたクラスの物理的な5つの条件による特徴づけを行った.また,このクラスのopen boundary conditionの下での分類を行った.完全不変量は端状態である.さらにこの結果を用いて,バルクでのハミルトニアンの分類をfrustration free とよばれる条件を満たすクラスについて行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一次元のギャップをもつハミルトニアンについて,frustration free と呼ばれる条件は付いているが、ある程度一般な状況下に分類を行うことが出来た.また,一般的なギャップを持つハミルトニアンの構造を知ることが分類を行う上で大変重要であるが,(やはり条件はついているものの),ある程度一般の設定の下でその特徴づけを行うことが出来たことは,今後一般の設定の下で考えていくうえで重要なヒントになると考えている.また,これらの結果を論文としてまとめ,出版した.

今後の研究の推進方策

次の課題は,まず一次元においてはfrustration free という条件を取り除くことにある.これまで得られたfrustlation free の場合の手法を改良することでできないかをまず考えたい.同時に,これまでに知られた可積分系などの例を良く理解していきたい.さらに,高次元系の分類に進みたい.高次元は,まずKitaevのquantum double modelと呼ばれるモデルについて理解し,その解析をすることでそこで何が起きているかを理解したい.

次年度使用額が生じた理由

高次元における分類について議論するため,研究者訪問を予定したが,うまく都合があわなかった.同時に,一次元系における結果をはじめに完成させることを優先した.

次年度使用額の使用計画

量子スピン系の第一人者であるBrunoNachtergaele 氏,またKitaev quantum double modelを熟知しているPieter Naaijkens氏を訪問あるいは招へいし,高次元について議論する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] A class of asymmetric gapped Hamiltonians on quantum spin chains and its characterization III2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 雑誌名

      Comm. Math. Phys.

      巻: 352 ページ: 1205-1263

    • DOI

      10.1007/s00220-016-2810-9

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A class of asymmetric gapped Hamiltonians on quantum spin chains and its characterization I2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 雑誌名

      Comm. Math. Phys.

      巻: 338 ページ: 1011-1042

    • DOI

      10.1007/s00220-016-2696-6

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A class of asymmetric gapped Hamiltonians on quantum spin chains and its characterization II2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 雑誌名

      Comm. Math. Phys.

      巻: 348 ページ: 847-895

    • DOI

      10.1007/s00220-016-2697-5

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] A class of asymmetric gapped Hamiltonians on quantum spin chainsand its characterization2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 学会等名
      QMath13
    • 発表場所
      アトランタ
    • 年月日
      2016-10-08 – 2016-10-11
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Classification of gapped Hamiltonians in quantum spin chains2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 学会等名
      MSJ-SI Operator Algebras and Mathematical Physics
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2016-08-01 – 2016-08-05
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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