研究課題/領域番号 |
16K05172
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
羽鳥 理 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70156363)
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研究分担者 |
三浦 毅 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90333989)
阿部 敏一 茨城大学, 工学部, 助教 (40749157)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 一般ジャイロ空間 / ジャイロ群 / バナッハ環 / C*環 |
研究実績の概要 |
単位的C*環の正凸推はジャイロ構造を持つことは知られていたが,それ自身やある種の部分集合が一般ジャイロ構造を持つことを示した。特に多くのユニタリー不変ノルムについて一般ジャイロ空間であることを示した。これはある幾何学的な不等式をHiai-osakiの不等式を用いて証明することに成功できたことよおり明らかにすることができた。応用として正凸推をある種のユニタリー不変ノルムから導かれる距離に関する距離空間とみた場合に,その間の全射等距離写像の形を決定することができた。これはKaplanskyの定理で与えられるC*環の間の全射等距離写像の形と関係している。また,正凸推の部分構造における等距離写像についての知見が得られた。ジャイロ空間の構造に関する研究において,特に有限生成の場合についての成果を得ることができた。ユニタリー群の部分構造である特殊ユニタリー群の間の一般的な等距離写像についてその形が決定できた。単位的C*環の可換性について,ジャイロ構造に基づいた特徴づけが得られた。例えば単位的C*環の正凸推はジャイロ群であるが,それが群であることとC*環が可換であることは同値であることが示された。乗法的にスペクトルを保存する写像の研究と関連して,C*環の間に与えられた写像が*同形であるためのスペクトルの満たすべき条件を乗法的な形で与えることができた。特に,単位的C*環の正凸推のあいだの全射について,それが乗法的にスペクトルを保存すること,乗法的に非対称にスペクトル半径を保存すること,Thompson距離の一般化であるようなある種のの距離を保存すること,本質的にJordan*同形写像に拡張できることが同値であることを示した。関数環に値をとるリプシッツ写像からなる適切四つ組の間の写像がエルミートであるための条件を決定し,等距離写像の形の決定に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C*環の正凸推がジャイロ群であり,多くのユニタリー不変ノルムに関して一般ジャイロ空間であることが示されてことは大きな成果であり,伴って正凸推上の各種距離に関する等距離写像の形が記述できたことは,それ自身保存問題に対する成果であり保存問題研究の推進に寄与することができた。またジャイロ構造について有限生成の場合の構造の研究に進展があったことも成果の一つである。一般ジャイロ空間の理論整備に寄与する結果である。C*環の凸推のジャイロ群としての構造がC*環の可換性と関係していることが理解できたことにより,逆にジャイロ群の構造を考察するきっかけとなると考えられる。単位的C*環の正凸推のあいだの全射について,それが乗法的にスペクトルを保存すること,乗法的に非対称にスペクトル半径を保存すること,Thompson距離の一般化であるようなある種のの距離を保存すること,本質的にJordan*同形写像に拡張できることが同値であることを示したことは局所Mazur-Ulam型の定理への寄与も込めて一定の成果があったと考える。また,関数環に値をとるリプシッツ写像の全体からなるバナッハ環の間のエルミート写像の決定と,その応用として可換C*環に値をとるリプシッツ写像全体のバナッハ環の単位元を保存する等距離写像の形を決定できたことは保存問題の研究に対して一定の成果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
ベクトル値のリプシッツ環をはじめとする適切四つ組において,その準同形写像や等距離写像の研究を視野にいれた研究を行う。特に,単位的な可換C*環に値をとるリプシッツ写像全体からなるバナッハ環の間の単位的とは限らない等距離写像の構造の研究を行う。さらに一般に適切四つ組のできるだけ広いクラスに属する単位的可換バナッハ環に対しての研究を見定めて,リプシッツ写像のとる値を単位的可換C*環だけではなく,より一般的な単位的可換バナッハ環や関数間としたときに,単位的とは限らない複素線形等距離写像の構造を研究する。さらにリプシッツ写像からなるバナッハ環と同様に,ベクトル値で連続微分可能な写像の全体のバナッハ間についても研究の対象を広げる。これは乗法的にスペクトルを保存する写像の研究と関連して,特に可換の場合の研究を推進する結果につながると考えられるからである。一方で,ジャイロ群やジャイロ空間,一般ジャイロ空間などの一般的な対象の構造を各種の写像を通して研究推進する。ある種のジャイロベクトル空間での平均についての考察を行う。例えば,アインシュタインジャイロベクトル空間において,平均にあたるものの考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度末に出張を行ったため,旅費39,274円の29年度内の支払いが行われなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度当初に支払いが行われる予定である。
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