研究課題/領域番号 |
16K05176
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大山 陽介 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (10221839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 漸近解析 / q-差分超幾何方程式 / パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
1年目に引き続き、q-差分線型方程式の接続問題について研究を行なった。3階以上の超幾何型の場合について2階や高階微分超幾何方程式と異なる点があることに気が付いて、やり直したものである。 q-差分であれ、連続であれ、超幾何方程式の大域構造は完全に決定できるはずである。少なくとも、q-差分でも確定特異点の場合は19世紀のThomaeの接続公式がある。不確定特異点の場合には分岐がおこるが、連続の場合と違って3通りの場合がある。収束級数が分岐する場合、発散級数が分岐する場合、二つの異なる度合いの発散級数を持つ場合である。この3通りは個別に攻略するしか現時点では方法が無い。収束級数が分岐する場合は容易であるが、発散級数が分岐する場合は困難であったが解決を見た。最後の場合は未完成で最終年度に完成したい。 具体的には、まず5月にストラスブールでq-差分方程式の接続問題について現状報告を行なった。9月にリールに行き、高階q-差分微分超幾何方程式Zhangとの共同研究を行ない、大きく進展した。得られた結果の一部を徳島大学紀要で発表するとともに、10月のアクセサリパラメタ研究会、1月の超幾何研究会で発表した。また、今年度は1月に徳島大学で古典解析研究会を開いて、この分野の研究交流を行なった。30人程度の小さい集まりではあったが、地方大学でも研究交流の一端を担えることを示せたと思う。 2月はトゥールーズに行き、本研究のもう一つのテーマであるq-パンルヴェ方程式の大域解析についてRamis, Sauloyらと共同研究を行なった。この点についても、3年前にうまくいかなった点はわかったが、まだ完成には至っていない。年度の終わりに、静岡大でも講演を行ない、日本数学会で接続公式について2講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は3回渡仏して、うちリールとトゥールーズではかなり密度の濃い共同研究を行なって、q-差分方程式の大域解析について大きく進んだという手応えを持っている。他方で、二方向の研究がいずれも年度内では未完に終わってしまったので、出版された論文は徳島大学の紀要への1本だけになってしまった。昨年度は研究費の前倒しをしてまで渡仏したので、もう少し具体的な成果が欲しかったところである。 q-差分超幾何方程式は、原理的には接続問題が完全に決定できるはずのものであり、実際に2階の場合は全て書けている。高階の場合は分岐がおこるため(正確に言うと2階でも分岐が起っているが、2階で分岐がある場合は収束級数になるため、大きな問題にならなかった)、やや困難ではあるが、9月に目処が付いていたのに年度内で完成できなかったのは残念であった。 q-Painleve方程式の接続問題に関しても、3年ほど前にRamisらとの共同研究をはじめたものの、その後ほとんど進展がなかった。今回の共同研究で、とにかく前回の研究で不十分だった点がわかり、突破口は開けたが、慣性までにもう少し時間がかかるように思っている。 他方で、1月に徳島大学・古典解析研究会を開き、小さいながらも参加者には好印象をもっていただいて終わったのは収穫であった。若手からシニア研究者まで幅広い層が集まって交流できたことも、今後に繋がるのではないかと思っている。 以上をまとめて、やや遅れてはいるが、今年度にキャッチアップできる範囲であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはq-差分超幾何方程式の接続問題を完全に決定したい。微分の場合も、高階の場合は完全に接続問題は解かれているが、多くの文献の中に埋もれて、今になると全体像を掴むのにやや苦労するが、こうした状況に陥らないように、専門にやってる研究者が後世にもわかりやすい形で論文を公開したい。連続との違い、q-差分で障害となる部分、接続公式を定めるのに必要な道具は全てわかっていると思っている(まだ解かれてない以上、まだ未知の部分はあるかもしれないが)ので、これらを丁寧に明らかにしたい。 2番目は、q-差分Painleve方程式の大域構造である。これも、かなり追い詰めるところまで来たと感じているが、まだ完成していない。Painleve方程式の線型化方程式の指標多様体の記述と、Riemann-Hilbert対応の記述が目標になる。 昨年度、トゥールーズ渡航のために研究費を前倒ししたので本年度前半は徳島に落ち着いて,残された計算を地道にすすめていきたい。「研究実績の概要」で述べたように、昨年の段階で研究方針はかなり明確になっているので、時間だけの問題だと思っている。 もし、これらを片付けつつ余裕があれば、もう一つの大きなテーマである楕円漸近解析を行ないたい。昨年度3月の竹井義次氏による解析学賞受賞講演で、Painleve方程式の楕円漸近解析に関してきわめて重要な方針が示された。おそらく、竹井氏の方向で今後しばらく大きく動くのではないかと考えている。 なお残された研究費を用いて、年度後半には可能なら渡仏して研究を完成させたいと考えている。
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