q-超幾何差分方程式(Basic hypergeometric equations)の接続問題を,一点が確定特異点の場合に解いた。q-超幾何方程式の接続問題は,古典的にはThomaeによって確定特異点型の場合は19世紀に解かれていた。不確定特異点を持つ場合にもWatsonによって1910年ごろにいくつかの場合には解かれているが,当時はq-発散級数の総和法が不十分であったために現代的には不満があるものであった。 q-超幾何差分方程式の内,2階の差分方程式に対しては全ての場合について接続問題を解いていたが,3階以上の場合は困難があって未解決であった。困難の理由の一つは,3階以上の場合には不確定特異点におけるNewton図形が3つの辺を持つことに起因する。各辺ごとに異なる総和法を適用する必要があり,3つ辺を持つことは超幾何微分方程式の場合にはなかったからである。そこで,3つの辺を持つ場合には双方向の超幾何級数を考えて,その関係式を作り,なおかつ2段階の重ラプラス変換を考えることで接続問題を解くことに成功した。なお,本研究はリール大学のChanggui Zhang教授との共同研究である。 なお,超幾何差分方程式の接続問題は,Painleve方程式の接続問題を解決する際にも基本になるものであり,本研究によって,q-Painleve方程式の漸近解析や接続問題の多くの問題にも応用可能となる。まだ実行してないが,いくつかの場合はほぼ自動的に計算するだけで求めることができるであろう。主テーマであったq-Painleve方程式の漸近解析そのものについては手をつけられずに終わったが,ある意味で決定的な補助結果を得たことになる。
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