昨年度に引き続き,高橋博樹氏(慶應義塾大),山本謙一郎氏(長岡技術科学大),中野雄史氏(東海大)と共同研究を行った. 山本氏とは,互いの大学を往来し集中的なセミナーを行い.その結果として一般化されたベータ変換や mod 1 変換といったこれまでに知られていなかったいくつかの具体的な不連続な区分単調写像力学系に対して大偏差原理が成り立つことがわかった.中野氏とは,研究集会等の機会を利用して,ランダム力学系の極限定理に関する数学的議論を重ねた.山本氏,中野氏との共同研究の成果は,現在論文を執筆中である. 高橋氏,Juan Rivera-Letelier 氏(米国 Rochester 大)との1次元可微分力学系の大偏差原理に関する共著論文 "Large deviation principle in one-dimensional dynamics" が数学専門誌 Inventiones Mathematicae に掲載された. また,この結果をマルチフラクタル解析に応用する研究を進め,その成果を Mini-workshop on Dynamical Systems(九州大学),研究集会「エルゴード理論とその周辺」(まちなかキャンパス長岡),冬の力学系研究集会(日本大学軽井沢研修所)や京都大学数学教室談話会において発表し,Sandro Vaienti 氏(フランス CPT Marseille),辻井正人氏(九州大),鷲見直哉氏(熊本大)等参加者と力学系の極限定理や熱力学形式論,相転移現象やマルチフラクタル解析への応用等について議論を行い,今後の研究を推進するためのいくつかの有用なアイディアを得た.
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