研究実績の概要 |
本研究では,ヒルベルト空間上の有界線形作用素を扱う.その中でも,特に作用素不等式や作用素平均に関する研究,それらの応用としての量子情報理論や作用素エントロピーの性質に関する研究を行っている. 2つの実数あるいは作用素の平均として重み付き相加平均,相乗平均,調和平均が知られており,これらの平均を含んだいくつかの拡張や関連した平均も知られている.本研究では,研究期間内に大きく分けて次の3つの研究成果を得ることができた. 1. power difference mean,Lehmer mean,重み付きpower meanについて,それらをHeron meanで評価する不等式を得ることができた. 2. 重み付き平均の定義について重みをパラメータとするpathとみなす立場から精査し,Pal, Singh, Moslehian, Aujla (2016)による重み付き対数平均や重み付きHeron meanを含む一般化など,いくつかの一般化を与えた.そのことにより,新たに重み付きHeinz meanを導入することに成功し,いろいろな平均の間の関係を明らかにすることができた. 3. 作用素エントロピーやPetz-Bregman divergenceと呼ばれる作用素ダイバージェンスに関連した量の導入と,それらの性質についての考察を亀井氏,渡邉氏,遠山氏,伊佐氏との共同研究により行った. 令和5年度(2023年度)は,上記2に関連して,古市, Minculete, Moradi (2023)によって得られた数の場合の重み付き対数平均に関する不等式について考察し,これまでとは異なる形の一般化を用いた拡張を得た.この結果については,2024年3月に学会で口頭発表を行った.
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