研究課題/領域番号 |
16K05182
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
横田 智巳 東京理科大学, 理学部第一部数学科, 准教授 (60349826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関数解析学 / 関数方程式論 |
研究実績の概要 |
本研究では、発展方程式の抽象理論と実解析的手法を用いて、次の2つのテーマに関する数学的研究を行うことを目的としている。 A. 走化性モデルの時間大域的可解性及び解の漸近挙動 B. 複素ギンツブルク・ランダウ型方程式の時間大域的可解性及び解の漸近挙動 研究初年度にあたる平成28年度は、A、Bの準備的な研究を中心に行った。特に研究Aについては、感応性関数をもつ走化性モデルの時間大域的古典解の存在と有界性に関する決定的な結果を得ることに成功した。また、これまで扱われていなかった流体中の2種の走化性モデルの研究を行い、空間次元が2次元という特別な場合ではあるが、今後の研究の指針となる基礎的な結果を得ることができた。さらに、感応性関数をもつ走化性モデルの解の漸近挙動に関する詳細な結果を得ることにも成功した。以上の結果は、すべて論文としてまとめ、日本数学会秋季総合分科会、日本数学会年会、発展方程式研究会等の国内学会で報告し、国際会議「The 11th AIMS conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications」における招待講演の中で報告した。研究Bについては、熱方程式に対して知られる解の爆発解析の手法を、複素ギンツブルク・ランダウ型方程式に適用できることを論文としてまとめ専門誌へ投稿した。さらに、一般化に向けた準備的な研究を進めることができた。また、本研究課題に関連する研究者を海外から多数招聘して、国際研究集会を東京理科大学において開催し、有意義な研究交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、走化性モデルの時間大域的可解性及び解の漸近挙動に関する研究Aと複素ギンツブルク・ランダウ型方程式の時間大域的可解性及び解の漸近挙動に関する研究Bを並行して行うことを目的とし、研究初年度にあたる平成28年度は、A、Bの準備的な研究を行うことが目標であった。研究実績の概要で書いた通り、Aについては、多数の問題に取り組み、それぞれに対する価値のある結果を導くことができたことから、順調に進展したと評価できる。Bについては、すでに見通しが立っていたことを数学的に厳密に議論した上で論文としてまとめ、一般化に向けた準備的な研究を進めることができたことから、順調に進展してると評価した。
総合的に当初の計画以上に進展していると判断した理由の1つとして、研究Aにおいて、特に感応性関数をもつ古典的なKeller-Segel系の解の有界性に関して、Winklerによる証明の間違いを修正し、決定的な結果を得たことがあげられる。また、その結果は幾つかの研究で使用されていたことから、証明が不完全であることの学術的問題は大きいため、それが改善できたことの意義がとても大きく準備的な研究を超えていると判断した。さらに、感応性関数をもつKeller-Segel系の解の漸近挙動については、ロジスティック項等の人工的な補正項をもつ特別な場合を除いて先行結果は見当たらない。これに対して、本研究ではロジスティック項等で補正しない、本来のKeller-Segel系に対して、解の漸近挙動を決定する方法を発見した。これも当初の計画を超えた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で扱う以下の2つのテーマでは、考える方程式が異なっているが、時間大域的可解性と解の漸近挙動を考察する点が共通である: A. 走化性モデルの時間大域的可解性及び解の漸近挙動 B. 複素ギンツブルク・ランダウ型方程式の時間大域的可解性及び解の漸近挙動 そこで、それぞれの研究手法がお互いに活用できるかどうか吟味することで、今後の研究の推進を図る。例えば、解の爆発に関しては、研究Bにおいて、エネルギーを用いた考察が有効であることがわかってきたが、それを研究Aに活用することで新しい展開が見えつつつある。また、研究Bの方程式は放物型方程式であり、線形の場合に知られる半群の減衰評価は研究Aにも有効であることもわかっている。特に、流体中の2種の走化性モデル研究において、半群の減衰評価に着目した手法を試みることで研究の推進が期待できる。 また、初年度と同様に、得られた研究成果は、なるべく早く論文としてまとめ、国内外の研究集会で発表する予定である。研究集会での成果報告により、専門家の意見を聞くことができ、研究課題に広がりを持たせたり、異なる視点での研究の流れが生じたりすることが十分に期待できる。平成29年度は、国際会議「Equadiff 2017」、日本数学会秋季総合分科会、日本数学会年会、発展方程式研究会での成果報告を予定している。また、初年度と同様に研究2年目以降も本研究課題に関係する専門家を海外から招聘して、国際研究集会を開催することで、国際研究交流を行い、研究の推進を図ることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に関わる海外出張のための航空券代の価格の変動があり、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分と合わせて、出張旅費として使用する計画である。
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