研究課題/領域番号 |
16K05183
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
神保 道夫 立教大学, 理学部, 教授 (80109082)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 量子トロイダル代数 / ベーテ仮設 / ボレル部分代数 / 量子可積分系 |
研究実績の概要 |
従来の量子可積分系においては1変数ループ代数の量子化である量子アフィン代数が基本的な役割を果たしている。2変数ループ代数の量子化は量子トロイダル代数とよばれる。 量子トロイダル代数を対称性とする量子可積分系はこれまであまり研究されていなかったが、本研究はそれに焦点をあてる。 本年度は最も簡単なgl(1)型量子トロイダル代数を考察した。主要な結果は、普遍R行列のトレースとして構成される転送行列について、ベーテ方程式を証明し、 ベーテ根の対称式を用いて固有値を記述したことである。転送行列の展開係数は共形場理論における運動の保存量のq変形版(Feigin et al.2007)と一致することが示される。その固有値問題はこれまで未解決であった。 量子アフィン代数の場合、ベーテ方程式を導く標準的な方法は代数的ベーテ仮設法である。この方法は問題にあらわれるR行列の形が簡単であることに依存しているため、R行列が無限次元である量子トロイダル代数の場合には適用が困難である。本研究ではボレル部分代数の表現論を開発し、それによりBaxterのTQ関係式を導出する方法をとった。鍵になるのはボレル部分代数の「有限型表現」の概念を導入した点である。 この方法は量子アフィン代数の場合にも適用可能であり、ベーテ方程式の統一的な導出ができる。ボレル部分代数の有限型表現を導入し、副産物として1有限表現の分類などの結果も得られた。 以上の結果のうち、表現論とベーテ仮設法に関する部分は論文にまとめ、投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
gl(1)型量子トロイダル代数の場合にベーテ方程式を証明し、転送行列の固有値を記述することが当初の目標であった。これについて一応満足すべき結果が得られている。また副産物として、量子アフィン代数のボレル部分代数の有限型表現の概念、1-有限表現の分類などを研究し、ベーテ方程式の統一的な導出に応用することができた。一方、当初から予期してはいたが、一般のgl(n)型についてはほとんど研究を進める事ができず、技術的な困難を改めて認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
主に次の課題を研究したい。 1)一般のgl(n)型量子トロイダル代数についてベーテ方程式を証明する。この目的のためには量子トロイダル代数およびそのボレル部分代数について、PBW基底など基礎的な部分から研究を始める必要があるため、時間がかかることが予想される。表現論の専門家とも連絡を保ちつつ進めて行く。 2)共形場理論において、運動の保存量の固有値とある種の微分作用素の族との1対1対応(ODE/IM対応)が予想されている。量子トロイダル代数の立場からこの対応を理解するための端緒を探る。 3)可解格子模型および場の理論におけるフェルミオン構造の理論との接点を探る。特に運動の保存量(ベーテ仮設におけるものとはgradingが異なる別のもの)を量子トロイダル代数の立場から解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入を予定していたが、緊急性が低いため次年度に執行する予定とした。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入の予定である。
|