研究実績の概要 |
本研究では,可積分系の研究における「タウ関数」という視点と諸分野との関連を見出し,可積分系の世界を広げることを目標としている。2016年度は以下の結果を得た:1.GUE型アンサンブルについての最大固有値分布関数がPainleve IV型方程式の特殊解であるという事実がある(Tracy-Widom)。これに「広田の直接法」の立場からの別証明を与え,漸近挙動についても議論した。この成果についての論文が専門誌に掲載されている。2.Bethe仮説の研究で現れた "rigged configurations" という組合せ論的対象について,sl2の場合にはソリトン・オートマトンを使って簡明に記述できることを見出した (辻本(京大)・Willox(東大)・Nimmo(グラスゴー大)との共同研究, 現在論文準備中)。この成果について,国際研究集会 "The Fourth International Conference, Nonlinear Waves - Theory and Applications" (北京)にて講演を行なった。3.ヤング図形の組合せ論における Jeu de taquin という操作と戸田方程式との関係を明らかにした (太田(神戸大)・上岡(京大)・片山(立教院生)との共同研究, 現在論文準備中)。この成果については,日本数学会秋季総合分科会(関西大学)で発表した。 また,大学院生との共同研究により,離散可積分系に関する結果がいくつか得られている:4.三木らによって導入された「多重戸田方程式」と,GL(3)型Ward仮説との関係を議論した。相似簡約として得られるパンルヴェ系についても考察した (足立好輝(立教院生)との共同研究)。5.虚数乗法を持つ場合の楕円関数で解が表されるクラスの可解カオス系を構成した (久保涼平(立教院生)との共同研究)。
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