研究課題/領域番号 |
16K05184
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 可積分系 / 特殊関数 |
研究実績の概要 |
本研究では,可積分系の研究における「タウ関数」という視点と諸分野との関連を見出し,可積分系の世界を広げることを目標としている。2017年度は,ソリトン・オートマトンの組合せ論的側面の研究をまとめることに注力し,論文を発表した(辻本諭(京都大)・Ralph Willox(東京大)・Jonathan J.C. Nimmo(グラスゴー大)との共同研究)。従来のrigged configuration によるfermionic formulaの導出を拡張して,有限容量箱玉系と呼ばれるソリトン・オートマトンの一種に対応する場合の公式を導いた。この結果を拡張していくことが,次年度以降での重要な課題と考えている。 次に,昨年度より研究を続けている「戸田格子と組合せ論」という話題については,jeu de taquin というヤング図形の操作と対応する行列式タウ関数を,格子経路の組合せ論によって完全に記述することに成功した(太田(神戸大)・上岡(京都大)との共同研究)。2017年度中には残念ながら間に合わなかったが,現在論文をまとめる段階に入っている。 また,misanthrope 過程と呼ばれる確率過程を用いた交通流モデルに対して,系の相関関数とGelfand-Kapranov-Zelevinsky (GKZ) 超幾何系を用いて記述することで,熱力学的極限の明示的表式を得ることに成功した。この結果については,九州大学応用力学研究所において開催された研究集会において発表し,研究集会報告集に掲載されている(金丸真理子(立教院生)との共同研究)。この話題については,金井政宏(久留米工大)との共同研究で,シミュレーションとの比較なども交えて,結果を深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から計画していた課題については,順調に成果が得られてきている。また,今後に向けての準備的な課題についても,若干ではあるが進展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より進めている,「戸田格子と組合せ論」という話題については,研究がまとめの段階に入っている。まずはこの研究を論文の形にまとめ上げる。そして,「研究実績の概要」の欄で述べた結果も含めて,それぞれの結果を拡張していくことで,新たな成果が得られるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年11月に福岡において関連分野の国際会議の開催の準備として,本研究の代表者である筧と,連携研究者の梶原健司 (九州大),Ralph Willox (東京大) らを含むメンバーによる組織委員会を立ち上げた。その際に,以前から交流があり,本研究のテーマであるタウ関数の構造と関連する研究を行っている研究者を,海外から複数名招聘することで,議論を深めたいと考えている。招聘の際の旅費として使用するため,本年度の使用額をおさえて次年度にまわすというように計画を変更した。
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