研究課題/領域番号 |
16K05184
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可積分系 / 特殊関数 / 数理物理学 / ソリトン / テータ関数 |
研究実績の概要 |
本研究では,可積分系の研究において導入された「タウ関数」という視点を広げるとともに,その概念と諸分野との関連を考察することで,可積分系の世界をさらに広げていくことを目標としている。2020年度は,離散可積分系と関連するテーマを中心に研究し,ここまでの研究をまとめる形で成果が得られた。昨年度以来研究してきた,格子KdV方程式,格子ブシネスク方程式とKP階層のタウ関数との関係について,得られた結果を論文として投稿し,掲載された。得られた結果として,具体的には,オランダのグループによって研究されてきたタイプの離散方程式と離散戸田階層との関係を明らかにすることで,それに伴い,戸田階層のタウ関数との関係も確立することができた。上記の結果を証明する際には膨大な代数的計算が必要となるが,その部分には,計算機代数システム Risa/Asir を利用した。このテーマに関して,オランダのグループは "direct linearization" と呼ばれる手法を用いているが,彼らの手法と戸田階層理論との関係は,まだ解明できていない。こちらについては,引き続き研究を行う予定である。 離散ソリトン方程式のテーマと関連して,半離散変形KdV方程式についても研究し,離散戸田階層との関係についての予備的な結果を得ている。半離散変形KdV方程式は微分幾何学との関係も指摘されており,そちらの方向の発展も期待できる。 また,昨年度からの引き続きのテーマである「Jeu de taquin と離散戸田格子」,「交通流モデルとGKZ超幾何系」という話題については,まだ解決すべき問題が残っているが,2021年度中に論文にまとめるべく,研究を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように,格子経路の組合せ論と戸田方程式については,最終的な証明をまとめ上げる部分が完成していない。また,交通流モデルについての研究では,理論とシミュレーションのズレがまだ未解明である。シミュレーションの部分は久留米大の金井氏との共同研究であるが,感染症の影響で直接の議論ができていない。どちらのテーマもほぼ完成段階に近づいていると思われるが,まだ完成には至っていない。以上のことから,全体として,やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
上述の未完成の課題については,早急に研究を進めたい。 近年の感染症流行のため,海外を含めた研究集会での発表ができていない。そのため,論文の形式での発表を増やすとともに,オンラインでの発表などで,結果を伝えていくことを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には国内外の学会で,これまでの結果を積極的に発表することを予定していた。特に,研究テーマが合致する2つの国際会議(ポーランド,インド)が 2020年度に開催されるとの情報があり,その両者に参加することを計画していたため,その旅費等に充当予定であった。感染症流行のために海外出張は難し くなったため,その分,2021年度は論文の形での発表をより多くし,その際の論文掲載料にあてる。また,論文執筆環境をより効率化するために,パソコン周辺機器の充実を計画しており,そこでも予算を使用する。共同研究者とのオンラインでの打ち合わせを効率化するための機材にも,予算を利用する予定である。
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