研究課題/領域番号 |
16K05186
|
研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
星野 歩 広島工業大学, 工学部, 准教授 (30598280)
|
研究分担者 |
白石 潤一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (20272536)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Macdonald多項式 / 変形W代数 / 結晶基底 / Kostka多項式 / Pieri公式 / カタラン数 |
研究実績の概要 |
(1)先行研究において一行型Koornwinder多項式の超幾何級数的な明示公式を構成したが,その構成過程で用いたCauchy型核関数をMimachi型核関数(双対Cauchy型核関数)に変えることで,一列型Koornwinder多項式の超幾何級数的な明示公式を構成した.同時にパラメータを特殊化することで,一列型B,C,D型Macdonald多項式の超幾何級数的な明示公式を構成した.この応用として,昨年度予想した一列型C,D型Macdonald多項式の組合せ的明示公式(一列型C,D型Macdonald多項式の単項対称多項式での展開係数を具体的に記述した明示公式)が正しいことを証明した.また,一列型C型(またはD型)Macdonald多項式と単項対称多項式間の遷移行列を具体的に記述し,その各成分がカタラン数(または二項係数)のb,q,t-変形(またはq,t変形)を与えることを示した.同時に,一列型C,D型Hall-Littlewood多項式とSchur多項式間の遷移行列を記述し,一列型C,D型t-Kostka多項式の具体形を与えた.また,C,D型Macdonald多項式とD型Schur多項式間の遷移行列を,BressoudのMatrix Inverseを用いて具体的に記述した. (2)C型Macdonald多項式のPieri公式は,Lassalleによってパラメータb=tの場合に「一行型」×「一行型」の結果が知られていた.本研究ではb=tの場合に「n行長方形型」×「一行型」のPieri公式の予想式を構成した.また,類似するいくつかの場合についてPieri公式の予想式を構成した. (3)無限系列アフィン量子群の可積分最高ウェイト表現の結晶基底を多面体表示を用いて具体的に記述した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)C,D型Macdonald多項式の明示公式を得るためには,先行研究で得られていた一行型の場合に加えて一列型の明示公式を得る必要があると考えるが,今年度はその明示公式を得ることができた.その結果をPieri公式等へ応用すれば,一般のウェイトをもつC,D型Macdonald多項式の明示公式の構成が期待できる.同時に,カタラン数のb,q,t-変形や二項係数のq,t変形を構成し,一列型C,D型t-Kostka多項式の具体形を与えたことは,組合せ論や表現論への応用が期待され,本研究への新たな手法の適用が想定される. また,C,D型Macdonald多項式とSchur多項式間の遷移行列を,BressoudのMatrix Inverseを用いて具体的に記述したが,これはKoornwinder多項式とB,C,D型Macdonald多項式間の遷移行列がある種のMatrix Inverseを用いて記述できる可能性を示唆していると思われ,今後の研究の進展が期待できる. (2)C型Macdonald多項式のPieri公式についてのパラメータb=tの場合の結果は,bが一般の場合のPieri公式の構成に必要だと考えられ,具体的な予想式を構成したことは今後の研究の進展に大いに貢献すると思われる. (3)結晶基底の具体形の記述は,Macdonald多項式と量子群の結晶基底の直接的な関係を調べる際に必要であると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
(1)C型Macdonald多項式については,b=tの場合の「n行長方形型」×「一行型」のPieri公式の予想式を証明することが必要だと考える.C型に限らず,現時点までの研究で得られた一行型と一列型の明示公式を用いて構成されるいくつかのPieri公式も併せて,一般のPieri公式の構成を目指す.また,Koornwinder多項式とB,C,D型Macdonald多項式間の遷移行列をある種のMatrix Inveseを用いて記述することも本研究の進展に必要であり,すでに着手している. (2)一列型B型Macdonald多項式の組合せ的明示公式を構成する.同時に,一列型C,D型Macdonald多項式の組合せ的明示公式の構成過程で得られた,カタラン数や二項係数のC,D型的拡張をB型的に拡張し,一列型B型t-Kostka多項式の具体形を与え,関係する組合せ論や表現論への応用を試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度,講演と研究打合せのためウィーン大学のSchlosser准教授の下へ出張したが,本研究の進展への成果があり,次年度も引き続き打合せを行う必要がでてきたため,今年度の研究活動に支障がでない限りで次年度に使用する計画に修正した. (使用計画) 今年度,データ収集のためワークステーションを購入し,これをもって主要な物品は購入済みのため,次年度は主に旅費と消耗品費に充てる.
|